抗議する権利のための抗議

ベネズエラの向こう見ずな鎮圧

Rash Repression in Venezuela
2014年2月24日 Francisco Toro

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お父さんやお母さんが話しているようなベネズエラが見てみたい

ここ数週間、抗議運動がベネズエラを揺さぶっている。しかしなぜこれほど多くの人が突然路上に出てきて抗議をし始めたのかという点についてはみな意見が一致していないようだ。食料と医薬品の不足に対する反応であると考える評論家がいれば、後退したチャベス時代以前のエリートが癇癪を起こして前回の選挙結果を破棄しようとしていると見る評論家もいる。政府自体は、相変わらず古い筋書き通りである。つまり、ベネズエラは、革命の影響がアメリカに至ることを恐れるアメリカ政府高官たちによって作られたファシズムの陰謀の被害者となっているということだ。

しかしながら、これらの相容れない説明のどれも最近噴出した怒りの特異な点を捉えきれていない。ベネズエラでの抗議運動は、ある意味、自己言及的であるという点だ。すなわち、組織的に抗議することを政府が国家への反逆と同じとみなしているという現実に直面して、人々は、まさにその抗議する権利を守るために抗議運動をしているという点だ。

この危機は2月4日、アンデス地方の都市、サンクリストバルにおいて学生運動のグループが大学のキャンパス内ではびこっている犯罪に対する抗議を路上で始めたことに端を発する。大学1年生の学生に対する性的暴行に関して警察が何の対処も行わなかったため、学生たちは州政府に対して自分達を守ってくれるよう一団となって要求するデモを行った。

それに対する政府のリアクションは、激しい警察による取り締まりであった。それはレイプの容疑者に対してではなく抗議運動をする学生たちに向けられた。抗議デモ参加者は治安部隊により催涙ガスでけちらされ、2人の学生が逮捕された。そして翌日さらに大きなデモが、前日の暴力に対する抗議運動としてサンクリストバルの路上で起こった。そして、ベネズエラ第二の都市マラカイボでも、学生運動家たちが連帯感を示すために抗議運動を始めた。が、結果的には国家警備隊により無情に殴られ、催涙ガスを浴びせられただけであった。2日目、50名の学生が負傷した。

抗議運動のサイクルは、鎮圧と鎮圧に対する抗議運動という形で広がっていき、抗議運動の焦点は変化していった。危険にさらされているものは自由に集会を開く権利なのだということに学生たちは気付いたのだ。

ベネズエラでは抗議運動の鎮圧は催涙ガスとゴム弾によってのみ行われるのではない。政府は延々と続くプロパガンダもその一つである。新聞、ラジオ放送局、6つのテレビ放送局、数百に渡るウェブサイトなどにおいて、集中的な誹謗中傷を行い、抗議運動のリーダーたちを、アメリカの帝国主義者とぐるになった影の多いファシストの陰謀を企む者として、悪魔のように描いてきた。

その主張は意味不明なものではあるが、それが休みなく繰り返されることからも、ベネズエラ政府が異議を唱えることは全て国家に対する反逆であると考えていることは明らかだ。そのような政治体制において、反対者たちに対する暴力を正当化することなど他愛ない。

政府が異議を唱える人たちを非難するために“ファシスト”という呼び名を気に入って使っている点も顕著である。あたかもニコラス・マドゥーロ大統領はファシストをけなすことなしにはフレーズを終えることができないかのようだ。実際のファシズムの土台の一つが異議を唱えることの正当性を認めないことであるという点を、マドゥーロ氏は完全に忘れているようなので、彼には皮肉も通じないようだ。

この反対意見に対する不寛容さ、そしてそれに対する暴力的な鎮圧こそ、今現在ベネズエラの学生たちが抗議していることなのだ。今日13名の死者と18件の拷問が疑われるケースがあり、500人以上の逮捕者が出ており*1、抗議運動は雪だるま式に国中に怒りの発作として広がっており、これにより政権の安定は揺るがされている。

(訳注*1:2月24日時点。2月28日の時点では死者13名、拷問の報告33件、抗議運動により拘束された人700名。ニューヨークタイムズより。

抗議運動が組織立っていないため、鎮圧されても抗議運動の立ち直りが早い一方で、無秩序な一面も見せている。反対運動に戦略的な方向性を示せるリーダーは誰一人としていない。外界から近辺のエリアを即席のバリケードで孤立させるという好んで使われる抗議運動の戦術も、いくつかのバリケードこそが暴力に追い込んでいることもあり、良くても自滅的にしか見えない。

とはいえ、ここまでの政府の反応はあまりにも不釣り合いなものだ。それはほとんど無尽蔵の催涙弾やプラスチック弾の供給から、装甲兵員輸送車、戦車、そしてバイクに乗った民兵の奇襲部隊に至る。ある時点では、石を投げている若造たちを脅すためにベネズエラ空軍のロシア製スホーイの戦闘機がサンクリストバル上空を周回していた。

現在の課題は、ここ数週間の凄まじい憤りを、一貫性があり、理解力のある体系立った政治組織として、全てのベネズエラ人の基本的人権のために立ち上がれるような運動にもっていくことだ。ベネズエラの野党穏健派のリーダーであるエンリケ・カプリレスがそのために努力をしている。先週土曜日にカラカスで行われた大規模な集会での演説で、カプリレス氏は著名な学生リーダーの横に立って、夜間の抗議運動や道路の封鎖、その他の暴力を引き起こすような戦術をやめることを、熱心に呼びかけた。

しかしながら、集会の外で彼の声を聞いた人はほとんどいない。なぜなら政府の圧力により、どの放送局もその集会の様子を放映しないようにされていたからだ。これは、政府が状況をエスカレートさせる戦略をとっていることを信じるにたる理由の一つである。
ウーゴ・チャベスは反対派を戦いに駆り立てるのを躊躇したことが一度もなかった。彼は社会全体を専制的なコントロール下に統合する一方で、対立こそ彼の熱心な支持者たちを集結させる最善の方法だとよく理解していた。後継者として選ばれたマドゥーロ氏はその教訓をしっかりと自分のものにしている。

しかし、チャベス氏はまた、本能的にこの手の戦術の限界も感じ取っていた。そして決してここまでの規模の抑圧を行うことはなかった。やり過ぎることや性急すぎることの落とし穴を把握する政治家としての能力が、マドゥーロ氏には欠けているように見える。とはいえ、はっきりしているのは、ベネズエラの学生たちは基本的な人権が無視されているのをただ受動的に見過ごしはしないということだ。それは彼らの抗議のスローガンが示している。

「お前たちが押し付けようとしている
キューバみたいな独裁政治は
絶対に受け入れないぞ。
絶対に!絶対に!」


訳者注:
これはニューヨークタイムズのOp-ed記事として書き下ろしたもで、2月25日付けでニューヨーク版のニューヨークタイムズ紙に掲載されたものです。筆者の許可を取って翻訳していますが、ニューヨークタイムズには許可をとっていないので、この先何か問題があれば公開を取りやめます。

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