検閲に抗して 

カデナ・カプリレスの攻防

Censorship and Rebellion at Cadena Capriles
2014年3月18日 Gustavo Hernandez Acevedo

“El Periodismo Primero” (ジャーナリズムが第一)
カデナ・カプリレスではスローガンが並ぶ

カデナ・カプリレス[1]は、ベネズエラで最大規模を誇る新聞社グループである。
しかし、同社の屋台骨であるウルティマス・ノティシアス紙(Ultimas Noticias)の日曜版から、アルタミラ広場で起きた抗議運動の特別取材記事を削除されてしまって以来、この社は混乱の渦中にある。本ブログの友人でもあるベテラン記者ラウラ・ウェファーが手がけた「グアリンバ[2]の背後にあるものは?」という記事は、ここで読むことができる(スペイン語)。もしダウンロードあるいは印刷したい場合は、こちら

ウェファーの同僚で、国連政治記者のオデル・ロペス・エスコテによると、ウルティマス・ノティシアスの編集長、エレアザル・ディアス・ランヘルはこの記事の発行許可を一度出したにもかかわらず、ぎりぎりになって取り下げたということだ。

その結果、カデナ・カプリレスの調査部門の部長タモア・カルサディージャも、抗議運動について書いた彼女の記事を掲載することを断念することとなった。そのあとすぐ、多くのジャーナリストは自分のブースに
“El periodismo premiero”(ジャーナリズムが第一)のスローガンを貼り出し、それから臨時総会を開いた

彼らは、カデナ・カプリレスの新しい指導者が行う露骨な検閲行為に対し激しく抗議している。
今後数日の間、こうした抗議活動は勢いを増すことだろう。[3]

ウルティマス・ノティシアスは、長きにわたり、ベネズエラの公共圏で独特の役割を担ってきた。
編集者は明らかにチャベス派であったものの、本紙は本国の他のどの発行物よりも中立的な見地に近く、アメリカ合衆国の指導者も認めるほどであった。調査報道に充てられた相当な情報資源は類を見なかった。また、そのタブロイド判新聞(写真・漫画中心の半ページ大の新聞)は素朴で気取らない見出しが人気をさらい、ベネズエラで肩を並べる新聞社の無いほど多くの読者を獲得したと言われている。

概略はこんなところだ。
昨年、カデナ・カプリレスは謎だらけで正体不明の、おそらく政府と密接に繋がっているであろう投資家売却された
以来同社は、明らかに政府を喜ばせるような決定ばかりしている。[4]
昨年11月、経済紙エル・ムンド・エコノミア・イ・ネゴシオスの製作責任者オマル・ルゴは、ベネズエラ中央銀行(BCV:Banco Central de Venezuela)の銀行支払準備金に関する公式データを発表した後、解雇された
彼は、解雇前に
「分別ある行動」を求められ、記事の内容変更を行うよう警告されていたという。

こうした出来事はオマル解雇の三週間前、カデナ・カプリレスに新しい議長が着任してから起こり始めた。
前アンソアテギ州知事(任期2000-2004)であり、幾度となく日和見主義者として名を馳せたダヴィッド・デ・リマ[5]である。

デ・リマは2012年に行われた大統領選のキャンペーン活動で、選挙の数週間前に疑わしい「MUD極秘パッケージ」[6]なるものを告発するなど、多大な役回りを演じた人物だ。そして数日前デ・リマは政府が催した多くの「平和会議」の一つに参加していた。またウルティマス・ノティシアスの経営責任者であるディアス・ランヘルも「ベネズエラに対するメディアキャンペーン」が張られているという政府の主張を支持していた

先週、ニコラス・マドゥロは「虚偽」を理由に、ウルティマス・ノティシアスを非難したところだ。
今回ウェファーの「大事なのは事実だけだよ、ママ」的なリポートが検閲対象となったことは、“ヘゲモニー(株)”(情報の覇者の私軍を表すために僕が考えてみた造語)に対する批判への彼らの応えなのだろうか。[7]
また今回の事件は、ベネズエラの「言論の自由」神話の正体を暴露する、膨大な事例の一端を示すことになるだろうか
「乞うご期待」といったところだ。

 


 

訳注と解説

訳注[1]  Cadena Capriles
Cadenaはスペイン語で「鎖、繋がり」の意味。ウルティマス・ノティシアスやエル・ムンドなどベネズエラで群を抜いた売れ行きを誇る日刊紙を傘下に置く。2013年の売却まで創始者の息子ミゲル・アンヘル・カプリレス・ロペスが経営していた。

訳注[2] グアリンバ
グアリンバは反政府抗議活動における抵抗形態のひとつ。提唱したロベルト・アロンソは「グアリンバの父」と言われる。詳細はこの記事の訳注[2]を読んでほしい。

訳注[3] 今回の検閲騒動を受けて、ラウラ・ウェファーとタモア・カルサディージャは辞職している。#ElPeriodismoPrimero (訂正線2014年4月4日)

訳注[4] カデナ・カプリレスの新しいオーナーは政府に近い人物であると噂されているが、実際には誰なのか誰も知らない。オーナーの名前は社員に対しても秘密にされており、雇い主の政治的な考え方や方針が全く不明なまま、ウルティマス・ノティシアスの記者達は取材を行い記事を書かなければならないという異常な状態が続いている。

訳注[5] ダヴィッド・デ・リマ
ダヴィッド・デ・リマはチャベス派、反政府派の間で繰り返し政党を変えている人物である。かつて野党に所属している時にチャベス政府により汚職で検挙されたが、検挙と同時にチャベス派に鞍替えし、その後なぜか裁判は行われず汚職の件を追及されることはなかった。しかしこの件によりデ・リマは政府に弱みを握られたといえ、今後もし反政府側に寝返ることがあれば必ず汚職の罪を問われるだろうと言われている。

訳注[6] MUDとはMesa de la Unidad Democrática 野党連合のことで、反チャベスの旗の下、ベネズエラの中道派、中道左派、左派、および中道右派などの政党が形成した選挙同盟を指す。
「MUD極秘パッケージ」とは2012年の大統領選において話題になった「MUDが政権についた場合に実施されるであろう経済緊縮政策」に関する資料のことである。

ダヴィッド・デ・リマやディアス・ランヘルといったあからさまな親政府派の人事に加え、定評のあったウルティマス・ノティシアスの調査報道が検閲されたことはベネズエラの報道関係者の間に衝撃と落胆を与えた。この件の顛末についてはタモア・カルサディージャが詳しく書いている

訳注[7] 「大事なのは事実だけだよ、ママ」ロサンゼルス市警察の架空の巡査部長、ジョー・フライデーが口にするお決まりの台詞。情報の覇者(Communicational Hegemony)とはベネズエラ政府(マドゥーロ政権)を意味する。ベネズエラでメディアの覇者は政府であり、反対派がメディアを通じて大衆にアクセスすることは非常に難しい。

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