マドゥロの経済政策がやばい

ちょっ・・・おま、戦略基金とやらに一週間の輸入分にも満たない資金しかないんだけど

Dude, Your Strategic Fund Has Less than a Week’s Worth of Imports In It
2014年9月4日 Francisco Toro

たったこんだけ!

何年もの間(文字通り何年間も)、ベネズエラ政府が“疑似財政資金”に、正確にはどれだけの資金を隠していたのかを、誰もが知りたいと思っていた。疑似財政資金というのは、国家開発基金(Fonden)やフォンド・チーノ(Fondo Chino)といった監査もなく、報告もなされない、完全に政府の裁量に任された会計のブラックボックス*のことだ。

これらの基金は通常の国家予算の枠外の収入で、ここにあるように国会などでの審議もなく政府が自由に使えるお金であり、監査もなく、報告義務もなく、何に対してどのように使用されてきたのか、いくら資金があるのか、全く不透明だった。

それがついに、昨日、マドゥロはついにその秘密をぽろっと漏らした。彼は、これらの異なる全ての基金の資金を一つの基金に、その名も偉大な戦略基金(Fondo Estratégico)にまとめると発表し、その資金総額はガクブルもののすごい額、なんと合計・・・7億5000万ドル!

諸君、その通り。1兆ドルにもならないんだと。前半期の輸入レートでは(一日当たり1億1500万ドルで)、ざっと6日半の輸入額にあたる。1週間分にも満たない!そして、これはバンク・オブ・アメリカが言うには、すでに去年と比べて36%も大幅に減少しているという現在の輸入レートで計算した場合のこと!

どういうことかって?それは、マドゥロはこの10月に返済期日が迫っている50億ドルを超える債務の返済を、どうにかしなければならないのだ。現状下で、ローンを借り換えることは、さすがにこの政府兼精神病院にとっても狂気の沙汰すぎて認められないと判断されたのだろう。

というわけで、 10月に国債保有者に対して支払う金額をとっておいて、残ったお金がこれ、というわけだ。

フォンド・チーノ*の管理については、カラカス駐在の北京からの外交官のために、良からぬことが起きるのを防ぐため入念に監視の目を光らせ管理している中国人達がいたはずだが(「帝国主義を打倒せよ!」ってやつ)、彼らは新しい基金までフォンド・チーノが引き継ぐつもりなのだろうか?(それに、繰り返しになるのを承知の上であえて言えば、この中国人たちは他の誰にも負けず劣らず、この政府の管理するベネズエラのマクロ経済にぞっとして、うんざりしていると思うんだけど。)

訳注*)フォンド・チーノ(中国基金の意味)は、中国からの融資。この支払いは、ベネズエラが石油を中国に提供することで賄われることになっているが、現在ベネズエラの石油生産が減少傾向にあり、中国向けの石油が足りないという問題もある。

一歩引いてみれば、これは“良い”ニュースだとも考えられる。なぜなら、ようやく、政府はここで、これらの監査なしの疑似財政資金における、今となっては、まぁ、全部使ってしまってたわけだけど、少なくとも現在の残高を公表することに決めたのだから。公表された額がこれだけということは、つまり、マドゥロが言っているのは、10年続いた石油ブームから得た利益を政府はまるごと使い切ってしまい、その代わり、政府はこの国を薬局でイブプロフェンさえ買えない様な所にしてしまったということだ。

あるいは、マドゥロは単に嘘を言っている。彼の言うところの基金は疑似財政資金を一つにまとめつつ、こっそりといくつかの疑似財政資金を他にキープしているとか。この場合、残高を公開するのを拒否するだけでなく、その存在すらも否定することで、ブラックボックス化した基金を今までよりもさらに不透明にするという、驚くべき離れ業を成し遂げたといえるだろう。

どちらの予測を選ぶにしても覚悟が必要だ。

 


翻訳者メモ

この国債の返済期限が2014年の10月であることは20年前から明らかだった。しかし昨今の経済不況のため、本当に支払いが行われるのか、という疑念が投資家達の間で起きており、これに対して、マドゥロは債権の支払いは行うと明言した。

ただし、この国債保有者に対する支払いにお金を使ってしまうと、中国から借り入れた資金が、本来の融資の目的であった石油の増産ではなく借金返済に当てられてしまうことになる。これを中国側が了承したのか否か、全く謎である。

また、ベネズエラは食料や医薬品、その他ほとんどの日用品を輸入に頼っており、債務履行を優先する場合、資金不足から生活必需品の輸入がたちまち滞ってしまうことになる。

かといって、ここで国債の支払いを行わないとなると、ベネズエラはデフォルトして混乱必至であり、政権維持すら危ぶまれる。万が一ベネズエラがデフォルトした場合、ベネズエラはチャベス時代の政策により国内産業が壊滅状態に陥っているため、生活必需品の不足は甚だしく、国民の多くが文字通り飢え死にしかねない事態に陥ることが懸念される。(この点では、アルゼンチンのデフォルトとは大きく状況が異なる。)

*ハーバード大学のハウスマンとサントスは、現在のベネズエラの物不足の惨状は多くの国民にとってデフォルト状態のようなものではないかと指摘している。確かにがん患者やHIV患者などの薬はどう頑張っても手に入らず、多くの人がすでにデフォルト後のような状況に置かれているともいえる。そこから漏れている人達は?ウォールストリートの超リッチな投資家達で、マドゥロはそこだけを救済しようというのだから、社会主義革命とは皮肉なものだ。

このような緊急事態にも関わらず、現時点ではベネズエラの経済の今後については、専門家でも全く予測できない状態で、憶測と噂で混乱状態にある。(この点については、元記事のコメント欄で専門家を交え活発に議論がなされている。)

この「全くわかりません」状態の原因の一つは、政府や大臣などが何かの発表を行っても、その発表通りには何も実行されないことが続いているせいである。

例えば、長年ただ同然に抑えられていたガソリン価格の値上げが発表されたにも関わらず、いまだに値上げは実施されていない。逆に全く何の発表もなかった主食のトウモロコシの粉は、こっそりと値上げが実行された。
また、現状打開に必須とされている外貨交換レートに関する対策を、元エネルギー省大臣/PDVSA総裁/経済副大統領のラミレスが発表したにも関わらず、実際には何も起きなかった上、ラミレスは経済関連の職を一切剥奪され、別の役職に変えられてしまった。

さらに、様々な政策の根拠となるべき詳しい経済のデータが一切公表されないことが挙げられる。これらはチャベス時代にはありえなかった秘密主義である。

ちなみにベネズエラ経済の背景については、日本語で簡潔かつ総合的にまとめたジェトロ・アジア経済研究所の調査研究報告書を参考にどうぞ。
坂口安紀編『チャベス政権下のベネズエラ』第四章チャベス政権の経済政策:政策内容と政策形成過程
この報告書を読むと、ベネズエラの問題は政治やイデオロギーの問題ではなく、根本的には経済の問題であることが本当によく分かる。ベネズエラで現在起きていることを理解するには必読です。

*2014年9月5日更新済み

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