国会議員の殺害、それが公安警察vs民兵組織の戦闘に展開?

殺された国会議員ロベルト・セーラ

殺された国会議員ロベルト・セーラ

7日、カラカスの中心地で長時間に渡る銃撃戦があった。反政府の抗議運動ではない。民兵組織コレクティボスと公安警察の戦闘だった。

ことの始まりは10月1日にPSUV(ベネズエラ統一社会党、チャベスの創設した現政権を担う政党)所属の若干27歳の国会議員ロベルト・セーラが厳重に警護がされた自宅でパートナーと一緒に殺されたことだった。

セーラが殺された様子は通常の強盗などとは大きく異なっていた

1日夜、セーラは帰宅後、二人のボディガードを帰らせている。他のボディガードは事件当夜は非番だった。9時半過ぎに6人の男がやって来る。防犯カメラには、うち2人が民間信仰のサンテリアの司祭の格好をしていたのが写っていたという。
非公式の情報源によれば、セーラのパートナーが犯人を家の中に入れたようで、彼女がまず刺殺され、さらにセーラも同様の鋭利な凶器で40回近く刺されていた。

動機などは不明で、強盗の犯行とも考えにくく、コンピューターなど高価なものも盗まれていなかったと言われている。

セーラの葬儀にはマドゥロ大統領や国会の議長ディオスダド・カベジョを始め多くの人が集まった。
マドゥロやディオスダドはセーラの死に対して「ファシストの自警団」の陰謀による暗殺、またマイアミのマフィア(具体的にどの集団をさすのかは不明)の陰謀だとして、反対派を激しく非難した。コロンビアのアルバロ・ウリベ元大統領の陰謀だとも発言している。
しかし、これらの非難の根拠となる証拠は一切示されていない。

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このようにセーラの殺人事件によりベネズエラ中が騒然とする中、突如、10月7日、カラカスの中心街で8時間に及ぶコレクティボスと公安警察CICPC(ベネズエラのFBIに相当する組織)の戦闘が起きた。

コレクティボスとは武装した民間人のギャングで、幅広く政府と手を結び、治安部隊と連携して動いていた。2月以降、抗議運動の鎮圧に駆り出されており、抗議する人々に向かって実弾を発砲している姿の映像も撮影されている。
元々は、警察の力が届かない貧民街を犯罪から守り安全を維持するために組織され、近隣住民の自助委員会も持っていたが、徐々に民兵組織として利用されることが増え、政府の汚い仕事をすすんで行っている。

コレクティボスが、実際どの程度まで政府によってコントロールされているかは不明だ。はっきりしているのは、コレクティボスは熱心な社会革命支持者、チャベス信奉者であるものの、統一された政府の指揮系統の一部ではないということだ。

突如カラカスのど真ん中で始まった公安警察対政府系ギャングの8時間にも渡る激しい銃撃戦
異常事態である。
ヘリコプターから警察が狙撃する写真まで出回っている。

そんな中、7日にコレクティボスのリーダーのホセ・ミゲル・オドレマンがコロンビアのメディアNTN24(ベネズエラ国内での放送は今年に入って禁止されている)に対して行ったインタビューが大きな反響を呼ぶ。
オドレマンはインタビューで、(セーラの事件に関して調査、証拠隠滅に来たと思われる)警察によって仲間が寝ている所を殺されたとして政府を激しく批判したからだ。
また、セーラの殺人事件と公安警察の関わりについて尋ねられると「数学は間違わない」という意味深な発言をし、コレクティボスはチャベスの革命を支持し、現政権に対しては断固反対するという姿勢を示した。

ちなみに、オドレマンはこのインタビューで「数学は間違わない」という言葉を二度繰り返している(1:58と2:42のところ)。しかし、それが何を意味するのか、コレクティボスと警察とセーラの事件においてどのような繋がりを示唆するのかは不明である。

ところが、そのオドレマンが、インタビュー後1時間半もしないうちに戦闘で殺されてしまう。写真にあるように(リンク先閲覧注意)、オドレマンは彼が率いるコレクティボスの本部前で撃たれて死亡しており、戦闘の中で死亡したというより、警察によって処刑されたという見方が強い。
オドレマンは30発以上撃たれていたという。何がなんでも生き返らせたくなかったのだろう。

一体なぜオドレマンは殺されたのか?彼は知りすぎたのか?目撃者だったから消されたのか?セーラの殺人事件と公安の関係について問われた時の「数学は間違わない」という言葉と、その直後の彼の死にはどのような関係があるのか?

現在分かっているのは、この戦闘でオドレマンを含む5名が死亡したことだ。警察はすでに動機などに繋がる証拠は隠してしまっており、人々の間ではさらなる憶測が飛び交っている。

さらに、この件に対して警察は「戦闘にコレクティボスは無関係である」という現状と完全に矛盾する声明を発表している。警察によれば、これは殺人の罪に問われていたただの犯罪者を逮捕するための作戦だったそうだ。

しかしながら、オドレマンがただの犯罪者、ギャングではなく、政権の中枢ミラフローレス政庁に深く関わっている人物であることは周知の事実である。

オドレマンは自らのTwitterアカウントで、殺された国会議員ロベルト・セーラと一緒に写った複数の写真や、現ベネズエラ大統領夫人と写った写真、チャベスと一緒に写った写真などを公開していた
政府はやっきになってセーラの一件とこのオドレマンの一件の関連を否定しているが、セーラとオドレマンが知り合いであったことは疑いのない事実だ。

また、オドレマンが警察がいいうような“ただの”犯罪者であれば、このような政界の重要人物らと一緒にいること自体がおかしいし、今年2月のようにコレクティボス代表として国営テレビでもスピーチするなど考えられないことだ。

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左から政府トップで現在は在カナダのベネズエラ大使、女性は未確認、別に殺されたコレクティボスのリーダー、殺された国会議員セーラ、殺されたオデルマン

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オデルマンとマドゥーロ大統領夫人

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オデルマンとチャベス

ベネズエラのテレビメディアは規制のため戦闘状況の生放送などを一切しなかった。
テレビをつければ、見られるのは国民的イベントであるミス・ベネズエラだ。
カラカスの住民にすれば、政府支持者、反政府支持者に関わらず、町の中心で激しい戦闘が行われているのに、テレビで見られるのは美人コンテストだけ、という状況はどんなに不安だろうか。(産経ニュースもミス・ベネズエラ情報などを翻訳している場合じゃないだろう)。

現在もベネズエラではTwitterなどSNS上で写真や伝聞が広まり、またそれら目撃情報と矛盾する政府の発表により、人々の間では様々な憶測が飛び交い、実際に何が起きていたのかは分かっていない。

ベネズエラでは、政敵が罪をでっち上げられ投獄されることはよくあるが、暗殺されるのは稀だ。チャベス時代で記憶にあるのは、2004年にダニーロ・アンダーソン暗殺事件くらいだ。
それに比べると、マドゥロ政権では、同じ謎の多い政治絡みの暗殺事件といっても、やり方がかなり強引で、政府の言説にも身もフタもないような矛盾が目に付くのは気のせいだろうか。


[HT: Las Matemáticas No Fallan2014年10月7日 Francisco Toro]

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