ベネズエラ近況(経済状況について)

billete_de_100_bolivares現在、ベネズエラではインフレが続きハイパーインフレも懸念されています。正確なデータが公表されていないため、実際のところハイパーインフレなのか否かすらも正確にはわかっていないようですが。

そして物不足が深刻化しています。行列屋として行列に並ぶのを仕事にする人が出てきたり密輸で稼ぐ主婦がいたりコンドームも不足し国営の薬局でもあれもこれも何もない状態で、状況は悪化の一途をたどっています。治安の悪さも相変わらず国連によればベネズエラでは貧困も急激に深刻化しているようです。

これらの原因は、政府の設定した1ドル=6.3ボリバルの公定レートです。平行レート(闇レート)では、2ヶ月前はまだ170ボリバルあたりだったのが、2015年3月17日現在で1ドル=267.43ボリバル。2013年に60ボリバルを超えて大騒ぎしていたのが懐かしく感じられるほどです。

なぜこのようなことになっているのかは、Caracas Chroniclesの創設者フランシスコ・トーロがベネズエラのバリオ(貧民街)の犯罪を研究している経済学者ドロシー・クロニックと共にニューヨークタイムズに寄稿した記事に詳しいです。(英語ですがベネズエラについてよく知らない人にも分かるように書かれた記事なので、ぜひ読んでみてください。)

さらに石油産業への投資が滞っていたせいでベネズエラは石油の産出量が減っています。その上に、ペトロカリベのようにベネズエラの石油資源に依存するカリブ海諸国へ石油を安価で送っており、さらに国内では政府の助成金によりタダ同然の価格に設定されているガソリン(公定レートで計算すれば100$紙幣一枚で大型車ハマーで地球を27周できるくらいのガソリンが買える)、その上に中国への借金返済のために石油を大量に送らなければならず極めつけが現在の石油の低価格です。

当然、このような状況で国内の支持率は下がる一方なので、マドゥロは政権維持に必死です。

今年1月、金策のために中国、ロシア、イランを始めOPEC諸国など多くの国を訪問しました。が、実質的にどこの国からも必要な援助を受けられず、石油価格の下落に歯止めもかけらず、外遊は徒労に終わり、ベネズエラ経済の絶望的な状況に改善の余地は見られません

また、政府はスーパーの行列を人為的に作り出したとしてチェーン店のオーナーを収監したり、インフレを隠すためなのか平行レートの価格が見られる「悪しき」サイトdolartodayモバイルアプリを取り締まる(その影響でDropboxやMinecraft、Tumblr、Pinterestなど他のAmazon S3クラウドサービスを使っていたサイトまでブロック)などしますが、どれも対策としては明後日の方向を向いており、政府は状況を全く制御できていません。さらに、状況を少しはマシにできたかもしれないSIMAD政策自体はあっさり取り消されてしまいました。一方、今月はチャベス没後2周年でもあり、政府はチャベスを称揚するプロパガンダには大金を注ぎ込み続けています

さらに、これらに反発する抗議運動に対する政府の締め付けはますます厳しくなっており、2月には、昨年の一連の抗議運動の発端となったタチラ州のサンクリストバルで14歳の少年が抗議運動に参加する中で頭を打たれて亡くなり、また抗議運動に参加していた大学生が警官に実弾で撃たれて亡くなるなどしています。

また炎天下の中スーパーに行列を作る人々に対してコップに入れた水を配っていた野党穏健派エンリケ・カプリレス支持者の学生ボランティアが逮捕されることもありました。彼らが配っていたコップに書いてあったメッセージは、「これに慣れないで。私たちはもっと良い生活ができる No te acostumbres, podemos vivir mejor」というものでした。政府打倒を訴えたり、反政府野党の宣伝をしたせいで逮捕されたのではありません。人々に対して「私たちはもっと良い生活ができる」と言った罪だそうです。

マドゥロが反米だ、テロだ、クーデターだと言えば言うほど国内の危機的な経済状況に対して無策なのが垣間見えます。

しかし、デフレ対策と異なり、インフレ対策はよく知られているので、なぜマドゥロが有効な手段を打たないのかはベネズエラ経済の専門家でも全く理解ができず、様々な憶測を呼び、さらなる人々の不信と困惑と混乱を招いています。

現政権には経済を専門とする閣僚が全くいないという話もありますが、バンク・オブ・アメリカのアナリストのフランシスコ・ロドリゲスが陰で政府のアドバイサーの役割を担っているという話や、あるいはディオスダド・カベジョ国会議長がマドゥロを陥れて次期政権を担うための陰謀である、という噂もあり、すべては社会主義政権の秘密主義のベールに包まれたままです。

ちなみに、「まずは公定レートと平行レートを一本化するべき」という点では、対立しているフランシスコ・ロドリゲスと、ハーバード大学のリカルド・ハウスマン教授見解は一致しています。

現状では、マドゥロは遅かれ早かれ失脚を余儀なくされるでしょうが、問題はその後どのような形で次の体制に移行するかという点だと思います。さらなる大混乱が訪れるのか、なんらかの妥協点が見出されるのか、誰が、どのような形で次の政権に就くのか予想が難しい状態です。

これらはマドゥロが政権のせい?見境なく資金援助する中国のせい?ベネズエラの根本的な問題の原因はイデオロギーではなく、チャベス時代から続く滅茶苦茶なマクロ経済にあります

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ベネズエラ近況(経済状況について)」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 世界一治安が悪いが物価は安いベネズエラは天国か、それとも地獄か? | JIBURi.com

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