ベネズエラ国会議長にかかる麻薬密輸の容疑

長年の間、麻薬(コカイン)の密輸を組織していると噂されていたベネズエラの国会議長ディオスダド・カベジョに対して、ついにアメリカの麻薬取締局が本格的に立件に向けて動き出しました。このリーク記事がウォール・ストリート・ジャーナルから出て、ベネズエラ中で大騒ぎになっています。麻薬密輸に関する軍と政府幹部の関与は、ベネズエラではもはや公然の事実でしたが、特に、ベネズエラでマドゥロに次ぐ2番目の実力者で、一時はチャベスの後継者とも目されていたディオスダド・カベジョが明確にターゲットとなり捜査が進められることが明らかになったのは初めてです。


愛しい同士によろしく

Say hello to my little comrade

2015年5月18日 Juan Cristobal Nagel

clubbing-with-diosdado

いつものことながら、次々に明らかになるディオスダド・カベジョについてのスキャンダルに対するキコと私の見方はかなり異なっている。キコの考えは、この茶番全体に興味を示すのは歴史家だけだというものだが、私は「太陽のカルテル(カルテル・デ・ロス・ソレス)」の解明はチャベス派内部の力関係に重大な影響を与えるだろうと考えている。

まず、ホセ・デ・コルドバとフアン・フォレロによる衝撃的な記事(西語の記事はここ)で、私が一番気に入った場所を紹介したい。

情報筋によれば、ワシントンの麻薬取締局とニューヨークとマイアミの連邦検察の精鋭チームが、元コカイン密輸業者や、かつてはベネズエラの政府上層部に近いポジションにあった情報提供者、ベネズエラの軍部からの離反者からもたらされた証拠をもとに、立件する方向で動いているという。

(中略)

麻薬取引に関与した疑いがもたれている軍高官のグループや政府高官については、「彼がカルテルのトップでないならば、トップの一人であるのは間違いないとする広範に渡る証拠がある」と司法省の職員は話した。「彼が主要ターゲットですよ」。

まず、もはや単なるレアムシだけの話ではなくなっている点が一つ。レアムシやイセアだけの話ではないのだ。この件には、数多くの捜査機関と、麻薬密売人だけでなく、増え続ける情報提供者と離反者を含む複数の目撃者が関わっている。

デ・コルドバとフォレロの二人はアメリカ大陸で活躍するジャーナリストとして最も幅広い尊敬を集めている。彼らの情報源はレアムシから出た噂話の範囲をはるかに超えるものだ。このレアムシの噂話については、ほんの数週間前にはこのブログの読者の多くは信じようとしなかったけど。(もう間違いを認めるね)

それに他のアメリカ側の情報源に加えて、アメリカの司法省が情報をリークしている点が一点。証拠は「広範囲に渡る」のだ。ちょっと考えれば、もし証拠が固まっていなければ、この件についてウォールストリートジャーナルに司法省がうっかり喋るわけがないのは明らかだ。

ベネズエラはコカイン製造に使われるコカの葉を生産しておらず、麻薬の加工も行っていない。しかし、データが手に入った去年2013年について言えば、約131トンのコカイン(これはコロンビアで生産されるコカインの総量の約半分に当たる)が、ベネズエラを通じて移送されたとアメリカ側は見積もっている。

なるほど、なるほど。たった一年間で131トンがベネズエラを通過していった、と。もし1.3トン(かの有名なエールフランスのフライトで押収された量)が2億7000万ドル(約327億円)の価値があるとすれば、単純計算で、この麻薬組織の事業は・・・270億ドル(3兆円)規模ということになる。

はい、3兆円。それも年間で。

それなら、全てがこの麻薬の帝王たちの懐に入るわけではないのは当然としても、彼らの取り分はどれくらいだろう?15%?この場合、ざっと40億ドル(約4842億円)だ。それでもかなりの額の金だ。

検察は、2年前のチャベス氏の死後権力の座に就いているニコラス・マドゥロ大統領はターゲットから外している。米捜査当局者の話では、当局はベネズエラを拠点にアメリカやヨーロッパに向けてコカインを輸送していた他の数人のベネズエラ政府高官と軍人を事実上の麻薬密輸組織のリーダーと見ているのだという。

司法省職員はベネズエラ政府と軍部の一部の上級職員について「もはや犯罪組織だ」と話した。

これは困った。マドゥロ、あんたじゃない。あの男なんだ。「ベネズエラ政府の一部の上級職員」という司法省職員の言葉使いに注目してほしい。明らかに、この件について話し合うために米公使トーマス・シャノンはカラカスとアメリカの間を行ったり来たりしているのだ

マドゥロにははっきりとした選択肢がある。ますます危うくなる大統領職の命運を、おしゃべりで扱いづらい“ずんぐりとした猪首の” (この表現すごく好き)麻薬密売人と共にするか、あるいはディオスダドとその一味を追いやって面子を保つか、いずれかだ。そして、キューバはマドゥロにどのような提案をするだろう?マドゥロのアドバイザーたちというのは、つまるところ、Arnaldo Ochoaを殺した人たちなのだ。

もちろん、これは全て憶測にすぎないが、マドゥロがこの時点でどうすべきか頭を絞っていないと考えるのは、やはり、あまりにもナイーブだと思う。

深刻さの度合いが増しているベネズエラの危機的状況のために、アメリカ当局にとっては情報提供者の勧誘、つまり、ベネズエラ政府幹部の側近の人々に協力を求めることは、どんどん容易くなっている。コロンビアとベネズエラの麻薬密輸業者もまたアメリカにやってきており、彼らは見返りとして寛大な量刑と居住権を得るため、ベネズエラの政府高官についてしきりに話したがっているとアメリカ当局の人間は言う。ニューヨーク東地区でベネズエラの事件に関わる連邦検事は「 ベネズエラにおける混乱のおかげで、立件はより確実なものになってきている。」と話した。

(中略)

「我々はベネズエラから協力者を得ており、彼らとはパナマやキュラソー島や、ボゴタで会っている」と、アメリカ当局と協力し、ベネズエラ政府高官と麻薬取引をつなぐ証拠を握るベネズエラ人を勧誘し事情聴取している元諜報員は言う。元諜報員の話では、ベネズエラ国外に住む元ベネズエラ軍人や他の人々には、元同僚に連絡を取り彼らに離反するよう説得することで協力してもらっていると言う。さらに、もし離反者が有益な情報を提供できる場合は、飛行機でアメリカに連れて行ってもらえ、そこで新生活を送ることが許されるのだそうだ。

これもまた非常に面白い情報だ。ただ一つの手がかりを掴んで終わりというわけではない。この事件は週を経るごとに大きくなってきている。人々は連邦検事に自分たちの話を聞いてもらいたくて仕方ないのだ。そしてこの組織内部で情報漏洩が大きな転換点を迎えたとき、この犯罪組織はどう出るだろう?ディオスダドは、次は誰に裏切られるか分からない状態で、夜、安心して寝られるだろうか。こうして魔女狩りは始まる。そしてベネズエラ政府のような犯罪組織にとっては、魔女狩りは恐ろしいことになる。

諜報活動と麻薬密輸対策に従事していたものの、毎日のように目にする膨大な汚職に恐怖を感じ、ついに昨年ベネズエラを去った元ベネズエラ国家警備隊員は言う。「国家警備隊とベネズエラ政府幹部が麻薬密輸に関与しているのは明白だ。あそこで働く人はみんなプレッシャーを感じている。遅かれ早かれ、誰もが麻薬密輸に手を染めることになるのだ。

(中略)

アメリカはまた、ベネズエラ政府幹部のために金の処理を行っていた銀行員や金融関係者からも情報を集めている。事情に詳しい人々の話では、昨年からアメリカ政府は56人のベネズエラ人のビザを取り消しており、これには身元は非公開の銀行員や金融業者も含まれている。そのうちの数人は、すでにアメリカへ再び渡航できるよう捜査官への協力を申し出たようだ。

ビザを取り消された二人のベネズエラ人金融業者の代理を務める弁護士は言う。「捜査のために、これらのブローカーはみな大慌てしている。情報はすごい勢いで入ってきている。」

ベネズエラ政府が行うあらゆることと同じく、この麻薬密輸も誰もが知っており、その意味でも政府の無能をさらけ出していると言える。

どう見ても、誰もかれもが、そして彼らの母親たちすらも、何が起きているのか知っていたのだ。そして、知っていたということは、彼らは証拠を握っていたということだ。さらに言えば、特に銀行員などが大慌てしている点から考えるに、国際市場におけるベネズエラ政府の資金調達能力は壊滅的状況にあると思われる。なぜなら、ウォールストリートが麻薬カルテルに融資することなどないからだ。それに56人のベネズエラ人が(7人じゃない、その8倍もの人が)秘密裏にビザを取り消されというのはどういう意味だろうか? また、ビザを取り消された銀行員たちとは誰なのだろう?

アメリカ側は弱いマドゥロに対して強硬姿勢に出ているが、その半分も誰か分からないのだ。実際、誰のことか分かっているのは56人中たったの7人だけである。

最後に、この記事では懸命にも触れられていない地政学的な観点がある。頭のおかしいバカが世界最大の石油資源を管理するのと、犯罪組織がそれを管理するのでは全く話が違ってくる。ベネズエラが麻薬国家であることが立証されれば、マドゥロに対する近隣諸国の支持に重大な影響が出るはずだ。この極秘の捜査資料が、プラナルト宮(ブラジル大統領府執務室)やモンクロア宮殿(スペイン首相官邸)、ナリーニョ宮殿(コロンビア大統領官邸)、あるいはカサ・ロサダ(アルゼンチン大統領官邸)に渡ることは寸分の疑いもない当局が掴んでいると主張するこれら全ての証拠を前にして、一体どこまで近隣諸国のリーダーたちはマドゥロのために進んで危険を冒すだろうか。

この件は、国際的なチャベス主義者の結束を脅かすものだ。これは、政府の官僚制度内部の機能と軍の機能を脅かすものであり、プロパガンダや金融面といったマドゥロ体制を維持している国際的な連携を脅かすものなのだ。

もちろん、これらによっても微塵の変化も起きない可能性もあるし、その場合はキコが正しいということになる。だけど、(本当っぽさには用心すべきだが)今回だけは今までと違う気がする 。

アメリカの法執行機関はこの件に今までとは全く異なるレベルで取り組んでいる。もしこれら全てが何もなく静まるとしたら驚き、いや、もはやショッキングですらある。

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