行列と粉ミルクとトウモロコシ粉と闇市とインセンティブと

The line, the milk, the flour, the bachaque-ating, and incentives
2015年5月11日 Anabella Abadi y Bárbara Lira

金曜日の午後、父から不可思議なメールがきた。

“Anabella. Sábado A Las Ocho. Leche En Polvo. Nuestro Gama. Cédula Tuya y Mami”.
「アナベラ – 土曜8時。粉ミルク。Our Gama (近所のスーパーの名前). お前と母さんのIDカードの日」

このメールの送信時、父は家のすぐ近所のスーパーを出るところだった。そこで、レジの人が翌朝に特定のIDカードの番号の人*に粉ミルクを販売すると教えてくれたのだ。今週の土曜日の当たり番号は、IDカードの番号が0-1-2-3-4で終わっている人たちだった。
*訳注)現在ベネズエラでは物不足のため、一部の日用品は配給制になっている。配給にはIDカードの番号が利用されている。

土曜日の朝、母と私は8時にスーパーに着いた。しかし、すでに40人ほどの行列ができていた。私たちは8時18分には店の中に入り、そこから粉ミルク(一人につき900gが2袋)を買うために列に並んだ。その場で、さらに一人につき2kgのアリナ・パン*も買えると言われた。
*訳注)Harina Pan。ベネズエラの主食アレパを作るためのトウモロコシの粉の加工品。アレパをトウモロコシから作るのは非常に手間がかかるため、普通はアリナ・パンを使ってアレパを作る。

8時25分には配給品を持ってレジ精算の列に並び、8時56分にはスーパーを出た。

2袋の粉ミルクと2袋のアリナ・パンを買うのにかかった時間は56分だった。天にも昇る気分だったが、同時に、ふと少し不安になった。

Pure gold

以前このブログに行列でどれほど苦労するかについては書いた。が、今回はレジの精算に並んでいたときに耳にした言葉について書きたいと思う。

“Esto nos vuelve delincuentes… O al menos nos hace sentir como delincuentes.”
「これのせいで私たちは犯罪者になるのね・・・実際にならなくても、少なくとも、犯罪者になったみたいな気がするわ・・・」

割り当てられた配給品を手に入れて嬉しいものの、どこかおかしい感じがするのだ。それが、生産にかかるコストよりずっと安い値段でこれらの商品を手に入れたのを私が知っているからなのか、あるいは、何百万人ものベネズエラに暮らす母親たちが何週間もの間ミルクを手に入れられずにいるという事実のせいなのか。私にはわからない。だけど現実に、この幸運を前にして、私は、そう・・・なんとなくいやーな気持ちになったのだ。

こんな風にラッキーな日が毎日続くべきなのに。スーパーに行くときの微妙な感情は、外貨管理委員会(CADIVI)の書類を提出する*ときに沸き起こる感情と同じだ。びくびくしてしまい、居心地が悪い。ラッキーだっただけなのに、それでも何度も何度も確認のために自問する。なぜなら、何か間違ったこと・・・ぐぬぬ・・・違法なことをしている気分になりたくないからだ。
*訳注)ベネズエラでは固定レート1ドル=6.3ボリバルと闇レート1ドル=402.35ボリバル(5月30日現在、ただしインフレで急上昇中)の他に、政府の指定する特定の条件を満たす場合(主に輸入や海外旅行など)利用できる別のレートがある。条件を満たす人は莫大な役所手続きを経れば、固定レートまでとはいかずとも、闇レートよりもはるかに良い条件で両替することができる。

それから、何度も何度も自分の配給品について考える。そして、配給品を手に入れたら、あとは必死に踏ん張る。

スーパーに行く通常の(特別な)日はこんな感じだ。

行列、秩序、そして配給品。 行列は秩序と公平さを保証するためにある。最初に来た人が最初に店の中に入れるのだ。でもベネズエラでは、行列は配給品を保証するためでもある。

例えば、お年寄りが列に割り込んできたとき、その人を列に入れてあげるべきなのだろうか?お年寄りなのだから、そんなに長時間行列に並ぶのは気の毒だ。だけど、もしお年寄りが列に割り込んだとしたら、何時間も待っている誰かの配給品をこのお年寄りが取ってしまうことになるだろう。

もしお年寄りを列に入れてあげたとして、その人たちは本当に自分たちのために物を買うのだろうか?それとも、お年寄りはバチャケロ*と呼ばれる非正規の露天商で、統制価格で商品を買っては闇市で売りさばく一味の仲間なのだろうか?
*訳注)バチャケロとは大蟻のこと。背中に大きな荷物を負って移動する姿から、闇市の商人を指して呼ぶようになった。

私たちが8時18分に到着したとき、お年寄りが警備員ともめているのを見たのだ彼は中に入れなかった。母はそのお年寄りを知っており、闇屋をやっている人ではないと私に言った。でも母がそのお年寄りを知らなかったら、闇屋をやっているかどうすれば分かっただろう?あるいは、これが他の人の場合だったら?

私たちが何が正しい答えだと考えようと、優先的に扱われるべき一人の年配の市民が潜在的な犯罪者のように扱われているという事実は変わらない。

***

闇屋についても少し言っておきたい。

私たち経済学者は特定の行為を非難しない。たとえ個人的にはそれを好ましく思っていないとしてもだ。そして経済学者は、そのような行為の動機は何かと問うものだ。それが望ましくない行為の場合、私たちが問うのは、その行為の背後にある動機を変えるにはどうすればよいか、ということだ。

2014年11月、ルイス・ヴィセンテ・レオンは「行列に並ぶ人のうち65%は転売のためだと言った。」多くの人が転売しているにしろ、10人の買い物客のうち6、7人もが転売しているかというと確信は持てない。闇屋のようにして生活している人はいる。買えるものを買って、必要な物と交換するのだ。

そして多くの人は(私の家族も例外ではない)、ただなんとか少しでもお金を節約するために列に並ぶ。給料がどれほどあっても、ボリバルで稼いでいる限り、購買力は分刻みで失われているからだ。

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たとえ闇屋ではなくても、価格統制された商品を購入するのは、有利な投資になる。 私は粉ミルク2袋とアリナ・パン2袋で166.98ボリバルを払った。

母は粉ミルク1袋が240ボリバルするという話を聞いていた。だが列に並んでいた人の話では、バレンシアではそれが500ボリバルもすることがあるそうだ。しかしまた、アリナパン1キロを70ボリバルで買える可能性もある。ということは、闇屋から粉ミルクとアリナ・パンを買った場合、1140ボリバルかかった可能性もあったのだ。これは、今日の買い物の7倍の出費だ。

買い物客の多くが闇屋であり、彼らがスーパーの店員にうまい具合に手伝ってもらって列に割り込んだり、自分の配給品以上の物を購入しているというのは、かなりムカつくと言わざるをえない。何日かすれば、同じ顔を何度も何度も見かけるようになり、かなり離れたところからでも闇屋だとわかるようになる。

だけど、個人的に闇屋のやり方に賛同できないとしても、私は経済学者として問わなければならないのだ。

「闇屋の動機となっているのは何だろうか?」と。答えはしごく簡単。 「そりゃ、がっぽがっぽ儲かるから」だ。

例えば、今日166.98ボリバルで買い物した物を転売して1140ボリバル儲けるなど簡単なことだ。たった一時間の「仕事」で、973.02ボリバルの利益が得られる。

最低賃金が時給に換算すれば42ボリバルであることも、忘れてはならない。
*訳注)ベネズエラの最低賃金についてはJBIC国際協力銀行の2014年12月のレポートを参照。

私はいくつか仕事を持っているが、それでもこんなに稼ぐのは到底無理だ。

多くのベネズエラ人が、正式な仕事をやめて闇屋の仕事に手を出すようになるのも当然だ。結局のところ、インセンティブの問題なのだ。

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