ベネズエラ選挙の基本の「き」

12月6日、ついに運命のベネズエラ選挙の日がやってきました。この選挙結果次第で、ベネズエラを中心にここ十数年続いていた南米の左翼政権の方向は大きく転換するでしょう。英米の大手メディアの多くもこのベネズエラ選挙について大きく取り上げています

とはいえ、一体ベネズエラ選挙とは何なのか、どのようなことが起きているのかは、ベネズエラ人以外では知らない人がほとんどだと思います。そこでベネズエラ選挙の基本を紹介します。これさえ押さえておけば、ニュースや新聞でベネズエラ選挙について報道されても何のことなのかわかるはず!


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Venezuela’s Election: The Basics

2015年12月4日 Francisco Toro

そもそもこれは何の選挙?

ベネズエラが選出するのは、国民議会の全議席167議席です。ベネズエラは一院制で、立法府がこの国民議会です。

いつあるの?

今週の日曜日、12月6日です。(そういうわけで、ベネズエラ選挙には6D*という略語が使われます。)

*訳註)ツイッターで#6Dのタグで検索すると、ベネズエラ選挙の様子がかなりわかりますよ。

選挙で争ってるのは誰?

二つの大きな陣営です。ひとつはウゴ・チャベスの設立した政権与党ベネズエラ統一社会党(PSUV)、もうひとつは、英語の略語だと不運にも「泥」の意味で知られる民主統一会議(MUD)*です。

*訳注)MUDはさまざまな野党がPSUVに対抗するために一致団結した野党連合。

どっちが勝ってるの?

ある程度信用できる世論調査では国内の一般投票ではどこも野党が2桁のリードという結果が出ており、その多くが15〜25ポイント野党がリードすると見ています。
これは接戦ではありません。

とはいえ、ベネズエラの恐ろしく複雑な選挙制度のせいで(むごい詳細についてはこちら)この予測が実際に国民議会で何席獲得を意味するのかは不確かです。野党の得票数が単純多数より少ないことは考えにくいのですが、野党が本当に必要なのは、全議席の5分の3、あるいは3分の2という「意味のある」多数なのです。これだけ議席を獲得できれば、政府に対してより強力な影響力を持てるからです。

カラカスクロニクル独自の予測モデルでは、野党は111議席を獲得すると見ています。これは、望まれる3分の2という圧倒的多数獲得するには1議席足りない数字です。全議席の3分の2以上が得られれば、ほとんどの問題について拘束力のある国民投票を実施して問うことができます。これは世間で言われる90〜100議席よりは少し高い数字ですが、これよりもっと高く見積もっている人もいます。

で、その圧倒的多数は得られそうなの?

この問いについては、ここ数日でベネズエラの政治家の間でも最も意見が分かれるところです。議会の5分の3以上は間違いなく可能です。でも3分の2は厳しいと私は思っています。

チャベス主義は国民に支持されてると思ってた。どうしてボロ負けしそうなの?

ベネズエラは史上最悪の不景気に見舞われています。
制御不能のインフレに陥り、生活必需品も店にありません。主要な食品や薬品、紙オムツやトイレットペーパーといったものを手に入れるには、何時間も列に並ばなければならないのです。国は本当に混沌とし、路上犯罪も手に負えません。そして国の経済政策は笑ってしまうほどにひどいのです。国民は本当にうんざりしています。

それに、チャベスの後継者ニコラス・マドゥロのことが好きな人なんていません。*

*訳注)チャベス派がこれまでマドゥロを支持してきたのは、マドゥロがチャベスが自ら任命した後継者だから。ただし、ここ最近はチャベス派内でもあからさまにマドゥロに反対するグループが見られ、チャベス派内の争いが起きている。

選挙は公正なの?

公正には程遠いものです。政府が行ってきた不正な活動や不当な優遇、権力の乱用、他にも選挙運動に関わる違反を挙げていけばきりがありません。そして、これは私の意見ではなく、米州機構(OAS)の事務総長他の人たちが言っていることなのです。

不正な活動の中にはあまりに厚かましいので、逆に感心してしまうようなものもあります。例えば、政府はごく小さなMIN-Unidadという政党を乗っ取り、実際は政府の候補者を支持する政党であるにも関わらず、投票に用いられるグラフィックデザインをわざとMUDとそっくりなものにしました。さらに、投票用紙でMUD枠の真横にそのMIN-Unidad枠を配置したのです。これはすべて、有権者を混乱させ、考えていたのとは違う党に投票させるためなのです。

ある選挙区では、政府はなんと野党候補者のイスマエル・ガルシアとたまたま同姓同名の人物を、MIN-Unidad枠の候補者として出馬させました。さらに、政府は本物のイスマエル・ガルシアの写真を偽の政党の選挙ポスターに載せたのです…マジで

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左は実際の野党候補イスマエル・ガルシアが、MUDの本物のポスターを手にしたところ。右側のポスターは偽の政党MIN-UNIDADによるもので、そこには本物のイスマエル・ガルシアの写真を使って彼に投票するよう呼びかけているが、ここで実際に候補に指名されているのは写真とは異なる同名のイスマエル・ガルシアという人物である。ここまでくると不正というより奇怪。

驚くべきは、これだけ不正を行ったにも関わらず、政府は大敗しそうだということです。

日曜日の夜、政府が汚いやり方でとりあえず勝つということは考えられない?

本当に誰の目にも明らかな方法以外では無理です。ベネズエラの選挙制度には多くの深刻な欠点がありますが、一点だけ、重要な利点があります。それは、証拠となる投票用紙*を残すタイプの電子投票マシンを使って投票することです。この証拠のレシートに対して、全国各地のすべての投票所で監査が行われます。

もし政府により発表された合計が各投票台で行われた監査の数と一致しなければ、すぐに分かります。またこれまで政府により発表された合計が各投票台で行われた監査の数と一致しない、ということは起きていません。

*訳注)ベネズエラの電子投票では、マシンで投票すると機械から投票内容が記した投票用紙が発行され、投票者はこれを投票箱に入れる。投票締め切り後、各投票所に設置された投票箱からサンプルの投票箱が選ばれ、これが監査の対象になる。電子投票に関する詳細は「ベネズエラの電子投票制度がダメな理由」をどうぞ。

でも、投票マシンはキューバの密室から操作されているって聞いたんだけど…

投票マシンに関してはかなりの数の神話化された物語があります。ですが、つまるところ、投票マシンとは世界でいちばん高価な鉛筆に他ならないのです。マシンは投票をプリントアウトし、プリントアウトされたものの手集計が行われます。これに対してティンブクトゥや他のどこかにいるハッカーが何かすることは不可能です。

でも投票マシンはワイヤレスネットワークに繋がれてるって…

だから、そんなものはないんだってば。

で、選挙後はどうなるの?

ベネズエラはこれまでの約17年間、今回のような政府が国全体をコントロールできていない状況に直面したことがありません。ベネズエラが向かっているのは、いわばテラ・インコグニタ(未知の世界)なのです。騒動や暴力は十分にありえることです。ですが、政府と野党側のいちかばちかの本格的な政治交渉もまた現実的な可能性のひとつです。そして政権の完全崩壊の可能性もまた、完全に除外することはできません。これは面白くなりそうです。

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