草の根運動はどのようにチャベス派の不正工作を打ち破ったか

12月6日のベネズエラ選挙にて、未曾有の経済危機のため政府は敗れたと言われます。ですがそれだけではなく、地域の投票所で不正を防ぎ、人々に穏便に投票を行えるよう野党により組織されたベネズエラ中の何千人ものボランティアの働きもありました。


El-soberano-habló-con-claridad-el-6D-por-Margarita-López-Maya-640A

How a grassroots movement defeated chavista dirty tricks
2015年12月11日 Francisco Toro

ファイナンシャルタイムズのブログbeyondbricsにて同時掲載

先週日曜日のベネズエラの議会選挙は、この国の政治の新しい時代の到来を告げるものだ。野党連合は、一院制の国民議会で167議席中112議席獲得という驚くべき結果を出した。世界最大の石油埋蔵国の政治状況をくつがえす大変動である。

日曜日の大変動は、何千人もの野党支持者ボランティアによる、未だかつてない一般市民の動員の努力の賜物だったのだが、これについて語られることはほとんどない。大勢の人々が投票所に出回り、選挙を不正に操作をしようとする試みを防ぎ、投票が平和裡に行えるようにしていた。

この活動はEPA(国民の支援チーム)として組織されていたが、これを運営していたのは、自分たちの地域の安全を守るために活動するどこにでもいる普通の人々だった。

クマナ市東部に住むイラセス・リバス(35)もそのひとりだ。彼女は近所に住む10人の野党活動家と40人ほどからなる普通の近隣住民からなるチームを率いていた。イラセスは午後6時になると、投票所がきちんと時間通り閉鎖されるようレベカ・メヒア投票所に顔を出した。法で決められた時間を過ぎてもなお投票を続けられるよう投票所を長時間開放することは、チャベス派が行うよく知られた不正工作のひとつである。この超過時間に政府はまだ投票を済ませていない公務員を捕まえて無理やり投票所に連れ込み、 圧力をかけて政府に投票させるのだ。下手をすると、投票所は夜遅くまで開いており、恥ずかしげもなく不正票を入れつづける現場となっていた。

イラセスは政府にそのような行為を黙認するつもりはなかった。彼女は近隣住民と一緒に投票所を開放しつづけようとする軍や国家警察の警官たちに毅然と立ち向かった。イラセスは法律も知っていたし、投票しようと「順番待ちをしている人々」がすでに投票を一度は済ませたことも知っていた。それは手についた消えないインクを見ればわかった。イラセスはこの奮闘のために正当な理由もなく逮捕され、4時間以上も勾留された。だが彼女の仲間は政府に対して圧力をかけ続けたので、投票所は程なくして閉鎖された。その投票所では初めて、しかも700票もの大差をつけて、野党が勝った。過去の選挙において、この投票所では野党は大抵100票の差で負けていた。

日曜日の選挙について書かれた記事の多くは、イラセスのような人々の貢献には触れていない。焦点が当てられるのは、経済危機や、慢性的な物不足、蔓延する無法地帯感、汚職ばかりだ。そしてこれらの問題にしか焦点が当てられないので、故意に不当な非難を受け、軽蔑され、悪者扱いされている世界中の民主主義を支持する運動の中のひとつが、どのようにしてボランティアを動員し、選挙で行われる不正を防ぎ、最悪の場合には選挙が流血の現場となるのを防ぐことができたのか、という話が目立たなくなっている。

過去17年にもわたる度重なる選挙において、ベネズエラの社会主義政府は、選挙における不正行為、ペテンや不正工作を完全なものにしてきた。政府派の選挙運動では、国家のリソースをいたずらに乱用し、有権者の個人情報の管理しているのをいいことに、投票していない人を探し出すことすら躊躇しなかった。これは違法行為だが、政府が手段を選ばず裁判所も管理しているような国では、違法といったところで意味がない。

ベネズエラの選挙における不正行為の鍵はつねに、野党側の立会人を脅し服従させることにかかっていた。25人ほどの重武装したチャベス派の暴漢たちのギャングが人々をバスにたくさん乗せてやってきて政府に投票するよう強制する。このような状況で、投票所に詰めている1人や2人の野党派の選挙立会人ができることなどほとんどない。

だが今回、野党派はそれに対抗する準備を整えていた。野党連合MUDは、まず特に政府による威嚇戦略にさらされやすい2150箇所の投票所を割り出した。そして、そこに地域の活動家のチームを組織し、チャベス派によるあらゆる暴力や威嚇行為の作戦に対応できるよう備えていた。一連のコールセンターと特別に作ったソフトウェアを駆使して、不正の報告を受けるとただちに地元の活動家チームを問題の投票所に派遣した。こうして、野党はベネズエラ中で行われる政府による権力の乱用を無力化することに成功したのだ。力をつけた地域住民が、国中で軍を基本とする政権を見据えて対峙した。それに対して政権側がたじろいだ。

日曜にベネズエラが経験したのは、ただの選挙ではない。それはアメリカ大陸でも最も弾圧的な政権に対する、国中の市民組織による抵抗という前代未聞の行為だった。

この先またベネズエラの野党が「あんなのはただの陰謀を企む一部のエリート集団で、豪邸に住む一握りの金持ちが貧しい人々の革命を台無しにしようとしているにすぎない」と否定されるのを見たら、このことを考えてほしい。

今回の選挙では、ベネズエラにおけるこの新しい多数派と、これまで言われてきた野党のグロテスクな風刺画的イメージ間のギャップが特に際立っていた。

これまで言われてきたような野党であれば、今までずっと大多数の住民がチャベスを支持してきたような非常に貧しい地域や田舎の町など、ベネズエラの隅々で政府と競り合い勝利することなどできなかったはずだ。

これまで言われてきたような野党であれば、注目の法学者でLGBTの権利を求める活動家でもあるタマラ・アドリアンのような、ラテンアメリカで初のトランスジェンダーの候補者が選出されることなどなかったはずだ。ちなみに「革新的」左派を自称しているはずの政府は、彼女が出生時の名前であるトマスからタマラに名前を変更することを今だに拒否している。

これまで言われてきたような野党であれば、国民議会での先住民枠の3議席全てで勝利することなど決してできなかったはずだ。

そしてこれまで言われてきたような野党であれば、イラセスや彼女の近隣住民たちを説得し、ボランティアとして弾圧的な政権の報復にも勇敢に立ち向かわせることなど決してできなかったはずだ。

つまり、これまで言われてきたような野党の姿はイカサマのプロパガンダなのだ。この偽りの宣伝が行われてきた運動が今体現しているのは、幅広い多数のベネズエラ人の民主主義に対する切望だ。

新しい多数による驚くべき動員によって、今回の日曜の選挙は大混乱に陥ることなく平和裡に終わった。この選挙によって、パルチザン的な急激な変化ではなく、本物の憲法に則った民主主義に秩序を守りながら立ち返る可能性が開かれた。

そうは言っても、日曜のボランティアの動員がなくても野党は選挙に勝ったのではないかと考える人もいるだろう。

おそらくは勝っていただろう。それほど政府に対する不満は大きい。

だが、議会の3分の2という大差をつけた圧倒的な勝利はどうだろうか。

これは疑わしい。イラセスらの尽力により防がれたチャベス派の不正工作は、最後の最後で政府が押し通せば結果が逆転されそうだった地域に集中していた。

彼らの働きが重要なのは、ベネズエラは投票の段階から平穏を失うことなく、決定的な地滑り的大勝が得られたからでもある。暴力と市民の混乱が起きても誰も驚かないような国において、接戦となった選挙の後に平和があった。長年野党派の活動家たちを恐れさせてきた政府派の暴力集団や武装した軍が出てくることはなく、そこには驚くほどの静けさがあった。

日曜日の夜、国民の民主主義への願いがくじかれることがないよう地域の活動組織は展開された。ベネズエラでの選挙後の市民の平和の少なくない部分が彼らのおかげだったのだ。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中