セルフ・ダンピングで苦境に陥るベネズエラの食料輸入事情(6月16日更新済み)

ベネズエラの物不足、食料不足は日に日に深刻さを増し、最近ではお腹を空かせた人々による襲撃事件や抗議運動がベネズエラ中で毎日のように起きています。

なぜベネズエラでは食料が不足するのでしょうか?原因はベネズエラが食料を輸入に頼っていることにあります。では、なぜベネズエラは外貨不足の中でもなお食料の生産よりも輸入を促進し続けるのでしょうか?それは、食料輸入を担う政府の一部の人が、輸入(あるいは輸入をしたふりをすること)によって莫大な利益を得ているからです。

ベネズエラでは、チャベス時代から国が決めた基本食品や日用品を低価格で国民に提供する政策が進められてきました。この価格統制によって、ベネズエラ国民は恩恵を受けるどころか、首を絞められているのです。

この記事はもともと今年の2月にCaracasChroniclesで公開されたものですが、現状に合わせて内容を一部更新して再公開します。


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ボリバル紙幣は印刷できても、食料は印刷できない
You Can Print Bolivars, But Not Food
2016年2月12日 (2016年6月15日更新)Pedro Rosas Rivero

「ベネズエラの状況は人々が自覚している以上に悪化するだろう。」これはすでにベネズエラの経済学者にとっては恐ろしい呪文のようになっている。現在の食料不足もひどいが、今後はもっとひどくなるだろう。政府が直面している米ドル財政には巨大な穴が開いている。対外債務に関するいかなる決断にも関わらず、その調整は、文字通り、国民の胃袋を通して実行されている。

今年の初めに評論家らは警鐘を鳴らし始めたのだが、それにはちゃんとした理由があった。ただし、当初の概算は(それがかなり厳しいものであったにも関わらず)、今ではありえないほど楽観的だったことが証明された。ほとんどの人は、政府は2016年には輸入総額を昨年に比べ約25%削減すると考えていた。しかし、最近になって経済担当副大統領は政府は輸入額を少なくても45%、できれば60%まで削減するつもりだと発言した。これはこの13年間見たこともない水準にまで輸入額が下げられるということだ。

ベネズエラは食料をますます輸入に頼るようになっているので、石油価格が急速に、それもものすごく急速に上昇しない限り、今年は食料を買うことが本当にできないのだ。全然お金が足りない。

チャート1と2で示されているように、食料輸入は1999年から著しく上昇した。これには、生きた動物、肉、果物、種子、野菜、穀物、粉類、あらゆる加工食品および家畜の飼料が含まれる。

Chart-1-Imports-by-Value

チャート1-輸入額

 

Chart-2-Imports-by-Volume

チャート2- 輸入量

食料輸入額は2008年以降、飛躍的に増加していて、2008年から2014年(入手可能な最新のデータポイント)の間で平均すると82億ドルである。輸入量は平均で808万メートルトンに上昇した。これは1998年から2007年と比べると、輸入額で299%、輸入量で74.5%の上昇だ。

そして、これらは輸入全体の増加率よりずっと早いペースで増加しているのがわかる。食料は今では輸入総額の19%、総輸入量の50%をも占めている。これに対して、以前は、輸入総額の10.6%、そう輸入量の33%しか占めていなかった。だが、これほど急速に輸入額が輸入量より増大したのはなぜだろうか?まずこれは国際的な食料価格が急上昇したせいなのだが、CADIVI*と汚職のせいでもある。

訳注* CADIVIとは固定相場制と外貨を管理する外貨管理委員会のことで、現在は機能は別の機関に移されCADIVI自体は廃止されたが、ベネズエラでは習慣的に現在もCADIVIと呼ばれている。

ここでの数字はかなり大きく見えるかもしれないが、この数字はなおも食料関連のベネズエラの輸入を少なく見積もったものだ。例えば、ここには包装や設備、肥料、化学薬品、あるいは流通の連鎖に関わるものが一切含まれていない。

政府の言い訳のひとつに、「我々の輸入が増えている理由は、人口が増えているからだ」というものがあるが、それを裏付けるような数字はない。チャート3とチャート4で示されているように、1人当たりの数字は同じことを示している。

Chart-3-Imports-by-Value-per-capita

チャート3 – 1人当たりの輸入額

Chart-4-Imports-by-Volume-per-capita

チャート4 – 1人当たりの輸入量

人口増加率の説明では、輸入額の20%の増加しか説明できず、また輸入量では27%の増加しか説明できない。ちょうど先に述べたのと同様に、2008年が大きな転換点となっている。1人当たりの食料輸入は、2008年から2014年の間で平均で1人当たり283ドルまで増加しているが、これは、それ以前に比べて239%の増加だ。輸入量でいうと、54.5%、289kgまで増加した。

輸入依存と食料不足に対する政府の別の答えには、(革命のおかげで)現在ベネズエラ人は以前に比べ食べる量が増えた、というものがある。でも、政府の出した数字自体がそのことを否定してるって知ってた?

チャート5で示されているのは、2014年の前半までの、ベネズエラ人が消費する主要食品上位7項目に関する国家統計院(INE)の報告で、1人が1日当たりに消費するグラム数だ。これらの主要食品すべてが輸入に頼っており、中でもパスタやパンなどは、ベネズエラで小麦粉が生産されていないことから、その大部分が輸入されている。

Chart-5-Food-consumption

チャート5 – INEによる食料消費

ベネズエラ人が自分たちの好きな食べ物をチャベス政権の下でより多く食べるようになっているとしても、それはデータには現れていない。2003年から2011年前半までは、主要食品4品は増加し3品が減少しており、全体的な変化は不明瞭だ。だが、2011年後半以降は、どの主要食品の消費でも明らかに減少傾向が見られる。ここ3年間で、人々が食べる量は以前より平均で20%減っている。

2003年から2011年に消費が増えたどの品目も、2014年までに元に戻ったどころではない。2003年に比べ2014年の消費量が多いのは、鶏肉だけである。11年間にわたるチャベス主義を経て、人々がこれら主要食品を食べる量は16.5%も減少する羽目になった。2004年以降、状況が改善したと信じられる根拠は皆無だ。食料不足はただただ悪化している。

食料輸入の増加の原因は、人口が増えたからでも、栄養状態が良くなったからでもない。部分的には、国内生産の減少による食料不足を穴埋めするため政府が輸入を促進し、実行した結果なのだが、これはまた、過大評価された公式ドルレートのせいで食料の輸入が(あるいは、ドルを入手する方法として、ただ食料を輸入しているように見せかけることが)並外れた利益を生むものになったからだ。

政府は、従来国内生産者によって供給されていた食料の輸入を、公共部門において大幅に拡大している。政府は、ベネズエラ国内で生産するのに比べ何倍も高い価格で外国から食料を購入し、これを、損失を出しながら、生産コストを大幅に下回る価格で販売している。事実上、これは自らに課したダンピングなのだ。国際貿易の規則の下では、貿易におけるダンピングはあまりに破壊的なため現に違法とされているが、これはベネズエラには当てはまらない。というのも、ベネズエラが行っているのは、自国が対象のダンピングだからだ。

これでは国内生産が崩壊するのも当然だ。

さらにひどいことに、政府は国内生産より輸入が有利になるよう規則を変更してきた

国内の食品産業もやる気が失せるというものだ。政府は何年も前に食料生産に関する統計を公表するのをやめた。だが、産業会議や連盟の声明を見れば(政府はほとんどこれを問題視していないが)、かなりはっきりと実態がわかる。

企業の没収と輸入品へのえこひいきに加え、価格統制によって産業は衰退した。上昇し続けるコストに直面している農家が、政府により制裁を受けた価格で販売しながら生計を立てることなどできない。農家には設備や部品が不足しており、政府が持ち込む人為的に安価に設定された食料と競争するなど不可能なのだ。その上、食料生産はパッケージ産業などの他の産業にも依存しており、これらの産業もまた酷い状況にある

これら産業を、すばやく、またお金をかけずに復活させることなどできない。ベネズエラ企業は外国のサプライヤーに何十億ドルもの負債がある。これは、輸入を認可してもサプライヤーの支払いのために公的資金から金を出さないという政府の悪習のせいだ。輸入業者が購入する際は通常後払いだが、この先サプライヤーは古い借金が返済されるまで商品を送ってはくれないだろう。当然だ。

それに今日では上層部が保証してもあまり価値がない。マドゥロとウルグアイ大統領の間で直接取り決めが行われた輸入品の支払いすら遅れているのだ。ベネズエラの国内産業とベネズエラ政府の返済能力が疑わしいことは世界中に知れ渡っている。

食料のサプライチェーンは末端までが長く、多くの産業に依存している。特に明白なものだけを挙げても、運送、化学、プラスチック、電気エネルギー、アルミ、農業と小売などがある。これら産業の多くまた、同じように、あらゆる輸入品に依存している。

政府もこの問題を忘れているわけではない。馬鹿げた根拠に基づいて最高裁によって承認された経済緊急事態宣言が意味するのは、つまるところ、政府が問題に気づいてはいるが、政府の直感は誤った政策で対応する方向に向かっているということだ。この宣言により、政府は食料の生産と流通に関連したすべての資産を没収する権限を与えられた。壮麗な独裁体制の用語を使えば、「必要なあらゆる措置を講じる」ための権限ということだ。

輸入削減の結果は惨憺たるものだ。人々は生活必需品が買えることを期待して店に何時間も列をなしている間にも、食料の数も種類も減り続けている。最後の手段として、自生するトロピカルフルーを頼りにする人や、さらに困窮した人の中にはゴミ箱を漁る人も出てきた。食料を要求する街頭抗議が自然と起きるのも、店や食料運搬車の襲撃も、もはや日常茶飯事だ。

政府による最新の計画は、店やスーパーを完全に無視して、直接食料を人々の家庭に配達するというものだ。CLAPという名前で知られる食料配給隊が、先日から幾ばくかの商品が入った袋の配達を始めた。だが、CLAPの職員が自分たちのために食料を取っているとか、配達される食料が少なすぎるとか、配達の頻度が少なすぎるとか、あるいはごく一部の人にしか行き渡っていないとか、不満の声はすでにたくさんあがっている。

食料危機に対抗するのに、いつものチャベス派の策略では役に立たない。チャベス派は追加の輸入品のために米ドルを印刷することはできないし、私企業を収用したところで食料生産が増えるわけではないからだ。さらに、現在我々が直面している外的ショックの規模を考えると、どう考えても(はい、ご一緒に)「ベネズエラの食料事情は人々が自覚している以上に悪化するだろう。」

方法論について:
「食料輸入」は、国家統計院の報告の通り、ベネズエラの関税コードのチャプター1から23に含まれるものすべてと定義し、チャプター14とチャプター22のアルコール飲料は除いてある。国家統計院の対外貿易データは1998年か10から2014年10月までしか入手できないので、2014年11月および12月は推定値である。

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