崩れゆくベネズエラ

ここのことろベネズエラは大きく揺れています。

大統領罷免選挙を求める野党、それを妨害するマドゥロ政府、さらに軍事クーデターの噂という不穏な政治状況に加え、物不足、食料不足、薬不足は深刻の一途をたどっており、ここ数日は毎日のようにベネズエラ各地で襲撃事件が起きています。

このような中で、ベネズエラに世界の注目が集まりつつあります。そして、それに呼応するように、ベネズエラの全体像を紹介する優れた記事も多く出でてきています。今回は、ベネズエラの現状を知るための注目の記事をいくつか紹介します。

悲惨な医療事情

ニューヨークタイムズで公開されたベネズエラの医療問題に関する衝撃的なレポートは、社会主義革命の目玉である「すばらしい医療制度」の幻想を打ち砕き、おぞましい現実を理解するには十分すぎるでしょう。

Dying Infants and No Medicine: Inside Venezuela’s Failing Hospitals

ベネズエラの医療の実態はまさに地獄です。

この記事によると、病院には抗生物質もなければ、点滴液も、包帯も、痛み止めもない。そもそも紙がない。怪我していても眠るためのベッドも病院には足りない。メリダの病院では、手術台の血を洗い流すための十分な水すらなく、飲料用の炭酸水で洗っている。安価な備品すらなくて、簡単な手当てが受けられなかったせいで赤ちゃんが次から次へと死んでいく。

私のカラカスに住む知り合いにも、先日、緊急で盲腸の手術を受けたものの、術後の抗生物質と痛み止めがなく、激しい痛みの中で感染症に怯えるという恐ろしい体験をした人がいます。

医療費無料と謳われる実態は悲惨な公立の病院を避けるのはマストとして、いざとなれば多少の額を払って私立クリニックに行けばなんとかなる…はずだったのは、過去の話。今では私立クリニックですら、施設の不備(設備が壊れても交換できない、備品や薬が入手できない)や薬品不足は深刻です。

ちなみに、先日、そのメリダのロスアンデス大学の医学部で抗議があり、当局と抗議参加者が衝突、武装した警察などが介入、負傷者も出た模様です。

危うい非常事態宣言

ベネズエラ大統領、非常事態宣言 停止工場を一斉取り締まりへ

5月13日の非常事態宣言以降、ベネズエラ全体の緊張は一気に高まりました。ここで一斉摘発というのは、つまりは言うことを聞かない会社に「接収するぞ」と脅しをかけることを合法化する、という危険なものです。

このような事態に対してアメリカも懸念を示しています。

懸念されるクーデターですが、具体的な陰謀の証拠はまだ出ていないとはいえ、政府が一つまた一つとおかしな動きをするごとに、国民の間では絶望のあまりクーデターに対する期待の高まりもみられます。

ただし、クーデターが実際に起きたところで治安回復や政権交代などがうまくいく保証はありません。チャベスは2002年のクーデター未遂で一時的に軍に監禁されるという苦い経験をしたため、その後念入りに軍の人事などの調整を行い、クーデターによって政権が転覆されることが二度とないよう準備を整えています。コレクティボスと呼ばれる武装した過激チャベス支持者による民兵組織がその例です。また、軍内部の麻薬絡みの対立の噂もあります。軍内部の実態が見えず、コレクティボスらがいる限り、軍が武力で事態を収拾できるという保証はなく、むしろ内戦の恐れすらあります。安易にクーデターが起きれば…と言えない理由がここにあります。

とはいえ、どのようにしてベネズエラはこのような事態に陥ったのでしょうか?これをうまくまとめたのが、アトランティックのこの記事です。

崩れゆくベネズエラ

Venezuela Is Falling Apart

工場経営者が労働者のためにトイレットペーパーを大量に買ったら、アメリカに支援された経済戦争の片棒を担いでいるとして逮捕される。これが今のベネズエラです。

書いたのは『権力の終焉』の著者モイセス・ナイームとCaracas Chroniclesの創設者フランシスコ・トーロです。(スペイン語版が読みたい人はスペインの新聞エルパイスでどうぞ。)

記事によると、ベネズエラでの死亡率はここ2年で跳ね上がっている。干ばつで水もないし、電気もない。長年、投資やメンテを怠ってきたインフラはボロボロ。

それくらいベネズエラは貧しい国なのでしょうか?石油価格下落の影響はそれほど甚大だったのでしょうか?

ナイームとトーロは否と言います。もちろん石油の影響はあるけれど、現在の危機的状況、物不足や治安の悪化などが急激に悪化し始めたのは2014年、石油がまだ1バレル100ドルで取引されてた頃だからです。

てんかんの薬さえ飲めば問題なく元気に暮らしてた14歳が、薬不足で数日間薬が飲めなくて亡くなる。こういうケースが毎日続々と起きてるときに、政府は薬の確保ではなく、F1レーサーのマルドナードに年間4500万ドル出し続けていた。

でもかつてはあんなに豊富にあった石油マネーはどうなったのでしょうか?汚職、汚職、汚職、汚職、汚職…で、もうありません。

貧困対策?チャベス派は長年、貧困層への教育をプロパガンダの中心にしていたけれど、これも現在では虚しいお粗末な状況です。学校給食プログラムは機能してないし、貧しい子どもは飢えまっしぐら。一方で2003年以降、政府関係者は食料輸入関連の汚職だけで2000億ドルは盗んでいた。

2000億ドルって、日本円で17兆円弱ですよ。しかも食料輸入関連だけでこの額です。

(この記事については、国連の外交問題のポッドキャストGlobal Dispatchesでもトーロが話してるので良かったら聴いてみてください。)

チャベス派の中からも起こる抗議

ちなみに、貧困対策でも特に有名なミシオン・ビビエンダですが、かつてはチャベス派の票は堅いと言われていたこのような場所でも抗議運動が起きていることを英紙ガーディアンが伝えています。当然だと思います。ミシオンのお世話になるような貧しい人から飢えていくからです。

In Venezuela’s housing projects, even loyalists have had enough

このような状況なので当然、野党の反発は大きく、さらにその反発を、政府は法的権力をもって(最高裁による野党が多数派を占める国会の無効化などによって)抑えつけようとしています。出口は見えないまま緊張ばかりが高まり、政治状況も芳しくありません。

混乱する政治状況

[FT]ベネズエラ、非常事態に 大統領解任求め混乱 

このシパーニの記事はベネズエラの政治状況について日本語で読める最も的確な記事だと思います。彼は抗議運動に取材に行き、催涙ガスを浴びまくって大変だったようですが。

この記事にもあるように、野党支持者が各地で抗議を行っており、政府当局との衝突は各地で頻繁に起きています。が、野党支持者にとって状況は決して楽観できるものではなく、困難が山積みです。

野党政治家は外に出て政府に反対の声を上げるよう呼びかけていますが、実際にその声に応えて抗議行う人々の様子は少し前のブラジルの抗議の様子に比べ、大勢の人の波というには程遠い、一部の人たちです。

これは、それだけマドゥロ政府当局が恐れられていることの証左でしょう。2014年の全国規模の抗議運動に参加した人たちは、政府に楯突けばどうなるのかコレクティボスの怖さも十分に思い知っているのです。

ベネズエラの状況は、比喩ではなく文字通り、日に日に悪化しています。2014年以降急激に悪くなり、ここ数ヶ月でさらに加速し、それがここ数週間、数日間で劇的に悪くなっています。今まさにベネズエラは崩壊しつつあるのです。

襲撃という新しい日常

最後にベネズエラの新たな日常となった襲撃の様子です。

数年前に立ち往生した肉を運ぶトラックが略奪されたときは大ニュースになりましたが、最近では略奪は「よくあること」。ベネズエラでは今年の最初の3ヶ月だけですでに107件の略奪が確認されています。

ヤラクイ州のサンフェリペでの略奪と警察による激しい鎮圧。

カラボボ州バレンシアで略奪。ここでは負傷者が2名出た模様。

 

観光地で知られるマルガリータ島にて、漁から帰ってきた漁師に襲いかかる人々。

 

カラボボ州トクジートで牛乳輸送のトラックを襲撃する人々。この写真を投稿した人々。それに対して警察が発砲しているという目撃情報もあり。

 

 

 

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