2015年のPDVSA決算報告書がついに出た

今月に入って、2015年のPDVSA決算報告書が公開されました。その中身を、ハビエル・ルイス、バルバラ・リラ、ペドロ・ロサス、フランシスコ・トーロ、ハビエル・リエンド、ダニエル・ウルダネータのカラカスクロニクル・チームが精査。その驚きの内容を一般読者向けにまとめました。

一国の経済の要となる巨大企業の決算報告書とは思えないグダグダさ、ごまかし、ちょろまかし。さすがベネズエラです。しかも、その尻拭いをベネズエラ中央銀行がさせられているなど、洒落にならない状況が明らかに。ベネズエラは全速力でハイパーインフレに向かっています。


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2015年度ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)決算報告書ツアー
Pa’ Que Cuadre Chronicles: : A Tour of PDVSA’s 2015 Financial Statements
2016年7月15日 カラカスクロニクル・チーム

今週、ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)は128ページにもわたる2015年の完全な決算報告書を公開した。ワクワクしてる?もちろん!というわけで、みんなが時間を取らずに済むように、大興奮の私たちがじっくり時間をかけて、泥をかき分けすみずみまで掘り起こしたよ。

私たちが見つけた内容の一部には、ぶっちゃけ、ゆっくり腰を下ろしてラム酒でも一杯やりながら聞いた方がいいような、かなり厳しいところもあった。とはいえ、まずは明るい話から始めようか。

生産レベル

PDVSAの報告によれば、2015年の総生産産量は日量286万3000バレル(b/d)で、2014年の289万9000b/dに比べて減少した。 1年間で3万6000b/dのゆるやかな減少だ。それほど悪くないように思える。ただし、これらの3万6000b/dを2015年のベネズエラの平均石油価格で考えると5億8670万ドルにもなるのだが。

で、あなたはこの人たちの言う石油生産量の数字を鵜呑みにするつもり?たとえばOPECは、2015年に235万7000b/dだったベネズエラの石油生産量は、今年6月の時点で209万5000 b/dに減少したと言っている。6ヶ月間で262,000 b/dの激減という衝撃的な数字だ。これは、(2002年から2003年の石油産業のストライキは考慮に入れなければ)90年代初頭から今までで最低の産出量だ。この損失を米ドルで考えるには、ラム酒がもう1杯必要だろう。

*訳注 OPECによれば今年に入ってベネズエラの石油生産量はさらに激減している。これは石油価格下落とは別問題で、PDVSAの適切な設備投資や管理不行き届きのためと考えらており、このままいけば石油価格が上昇してもベネズエラの石油生産量下落は止まらない可能性が高い。

さらに長期で見たPDVSAの生産パフォーマンスはかなりひどい。2005年に、PDVSAは「Plan Siembra Petrolera Plan Siembra Petrolera (石油会社拡大計画)」(アマンダ、深呼吸して)という2012年までに石油生産を600万b/dまで拡大する計画を発表した。確かに、その計画はうまくいかなかった。実際には、PDVSAの目標は達成されないまま頻繁に目標の再設定が行われ、もはやジョークのようになっている。この前も、当サイトの友達セッティが、PDVSAが発表したものの達成できなかった野心的な生産目標をまとめた面白いチャートを作っていた。

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希望の泉は枯れず…

とはいえ、笑いごとではない。PDVSA自身のデータによると、2005年の時点では、現に去年より35万b/dも多く生産していたのだから。ひえぇ

コスト

もっと笑えるのが、PDVSAの1バレル当たりの平均コストだ。2013年には11.40ドルだった生産コストが、2014年に18.05ドルに跳ね上がり、それが去年は10.68ドルに急落しているのだ。ん?

ちょうど石油価格が50%以上も下落した際に、PDVSAはコストを44%も削減できるとは、なんと都合の良い…これは奇跡?ヘラクレスの偉業並みのコスト削減?石油価格戦争で我々が戦い抜くためにパチャママの吐いた油が助けてくれているのか?そんなわけがない。

ここでの「第1級優先事項」は、「何か筋の通らないことがあれば、為替レートの不正を考えてみろ」だ。思った通り、バランスシート上でPDVSAが利用している加重為替レート*が、この奇妙さの主な原因である。一見、こうすることは道理にかなっている。というのも、PDVSAは両方の通貨で費用の支払いを行っており、その際にその米ドルの由来(輸出なのか、融資なのか) によって、いずれかの公定為替レートで中央銀行で両替を行っているからだ。

訳注* ベネズエラ経済の歪みの大きな原因のひとつが、この複数の外貨交換レートだろう。ベネズエラでは1ドルの価値は、その用途や誰が誰と交換するかによって異なる。その適用方法は「一応、決まっている」ものの、ベネズエラの汚職体質や汚職のインセンティブの高さから、実態は…お察しください。

そのため、何かに1000ボリバルかかったとして、これは2014年に48ドル(加重為替レートで1ドル=20.8ボリバル)だったものが、2015年には14.6ドルとなる(これは、加重為替レートが1ドル=68.70ボリバルまで下落したため)。したがって、これらの地元通貨での費用はあまり意味をなさない。
バチャケロ会計*っす。

訳注* バチャケロとは非正規の露天商を指す言葉で、統制価格で商品を買っては闇市で売りさばく人々のこと。ベネズエラ経済では、食料、薬品、日用品の売買から、国営の石油企業の取引に至るまで、統制価格と市場価格を使って利ざやを稼ぐ仕組みが浸透している。

ここでのレートとはPDVSAの加重平均為替レートのことで、PDVSAが中央銀行と交換したドルのレートのことだ。残念ながら、報告書にはこのレートについての詳細が一切なく、内容をダブルチェックすることはできなかった。

PDVSAのジャンクをベネズエラ中銀に押し付ける

この決算報告書の藪の中に奥深く踏み込んでいけばいくほど、ますますおかしな生き物が飛び出してくる。39ページ、私たちはまさに歴史的な売掛金の会計処理に関する注記を見つけてしまった。

2015年下半期、PDVSAは、ニカラグアとエルサルバドルが負っているペトロカリベ*の石油輸出に対する負債の借用証書をベネズエラ中央銀行(BCV)に譲渡した。ベネズエラ中銀に対するこれら譲渡により、PDVSAは合計で80億ドルの金融収益を計上している。これは額縁価格で、2015年のPDVSAの金融収益総額168億3000万ドルの半分に当たる。だが、ここ数年で最も業績の悪かった年の、この取引が実際に意味していることは何なのか。

訳注* ペトロカリベとはチャベスによって作られた石油協力機構で、ベネズエラが中米カリブ諸国に対して食品と交換に石油を優遇的な価格で供給する仕組み。石油と食品の交換は建前で、ベネズエラが経済的に不安定な中米カリブ諸国に援助を行うことで影響力をもつのが目的といえる。

私たちは腰を据え、この点についてかなり長い間みんなで考え込んだ。

出てきたベストの答えとしては、これが意味するのは、PDVSAは容易に換金できないニカラグアとエルサルバドルの借用証書を数多く抱え、長らくどうすることもできずにいたということだ。PDVSAは、ドミニカ共和国の借用証書を売却したように、これらも市場で売却しようとしたのかもしれない。が、 米ドルでは1銭にもなりそうになかったのだろう。そこで、PDVSAの誰かがもっと良いアイデアを思いついた。この紙切れをベネズエラ中央銀行に押し付けたらどうよ?

とはいえ、正確にはこうだ。PDVSAはベネズエラ中央銀行からは1ドルも受け取っていないようで、その代わりにボリバルを受け取った。それも大量に。

ベネズエラ中銀が現に米ドルを渡したならば、書類上に証拠が残ったはずだ。だが、この額の米ドルのアウトフローは 、ベネズエラ中銀の2015年下半期の外貨準備金の記録のどこにも見当たらない。

私たちの推測では、実際には、ベネズエラ中銀はこれらの借用証書をPDVSAから購入するために新たにボリバル貨幣を印刷したと見られる。

再確認するため、ベネズエラ中銀の2015年の月次決算書を見てみた。
月次決算では、「ハードカレンシーでの公債」と名付けられた費用が8月から10月の間で増加しており、その期間と増加額が、借用証書譲渡に関連するPDVSA側の情報とほぼ一致した。

ベネズエラ的には、つまり、2015年10月に印刷された100ボリバル紙幣のうち2ボリバル分はPDVSAのジャンク借用証書の支払いのために印刷されていたことになる。

さらに、ここではまだ言及していないことがある。PDVSA の報告によれば、この借用書の額面価格(ニカラグアとエルサルバドルの実際の負債額)は43億ドルである。にもかかわらず、ベネズエラ中銀への譲渡による金融収益は……80億ドルなのだ!

より多くのボリバルを得るために借用書の価格をつり上げたのは私?それともPDVSA?

この会計は本当にひどい。ひどすぎる。だが、ここでの被害者はPDVSAではない。中央銀行だ。ベネズエラ中銀のバランスシートにとって、これら債権のごまかしはふたつのことを意味する。火事と灰だ。

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ベネズエラ中銀のバランスシートをアーティスティックに表現

PDVSAの資産は回収できそうにない紙切れ満載で、その資産こそがベネズエラ中銀の負債の価値…つまり、財布に入っているお金の正体だということだ。

政府が、国をあくまでハイパーインフレに陥れるようなこの手の政策の実施をやめてくれれば、私たちも、ベネズエラがハイパーインフレには向かってはいないと思えるのだろうけどねぇ。

PDVSAは石油会社から予算外支出手段へと変身

だが、これらのお金は全部どこに消えたのか?PDVSA が事業費と運営管理費の両方で莫大なコスト削減を報告していることを考えても、これは少し不可解だ。なんと、その支出の一部は昨年増加した社会貢献費に消えていた。

PDVSAは、2015年に92億ドル相当を、グラン・ミシオン・ビビエンダ・ベネズエラやPDVAL、PDメルカルその他の社会プログラム*に費やした(82億ドルはボリバル建てで直接支払われ、9億7400万ドルはハードカレンシーでFONDENに支払われた)と言っている。これに対して、2014年の社会プログラムへの支出は52億ドルだった。思うに、これが12月の選挙でかかった費用なのだろう。

訳注* チャベスの始めた貧困対策を謳った社会プログラムで、ミシオン・ビビエンダは住居提供プログラム、PDVALは食料供給ネットワーク、PDメルカルは価格統制品の販売を行う政府系スーパー。

PDVSAはここ5年間でミシオンの大部分に直接資金提供してきた(国庫金の一元的な管理?なにそれおいしいの?)*。 たとえば、2011年と2012年のバランスシートを見ると、両年の間で費やされたPDVSAの社会貢献費は純額で529億ドル相当になる。これはボリビアとホンジュラスの名目GDPを合わせた額だ。

訳注* ベネズエラの憲法では、政府の予算はすべて国民議会の承認が必要と定められているが、チャベス時代より政府が議会の承認を無視する憲法違反が常態化している。さらに、中央政府は各予算の2割を地方政府に給付することが義務付けられているが、予算の承認が行われないため、地方政府に予算が平等に行き渡らない。このため野党派政治家が知事を務める州では予算不足が深刻な一方で、政府派には非正規に予算が与えられるなど、中央政府による地方政府管理の手段となっている。

中国のささやき

ところで中国は?中国から得た資金の支払いのため送られている何千バレルもの石油はどうなった?と不思議に思っている人もいるだろう。

PDVSAは中国に57億9000 b/dを送った。これは2014年に送った量(47億2000 b/d)を上回るが、当然ながら、この量でも2014年ほどの価値はない。2014年時点で144億ドル相当だったのが、2015年では84億ドル相当だ。

中国の受け取る量が増加し、PDVSAの生産量は減っているのだから、どこかで大きな削減が行なわれていなければおかしい。ここで政府の本当の優先事項について考える必要がある。

割を食ったのは誰か?それはラテンアメリカとカリブ諸国だ。エネルギー連携協定にもとづき送られた石油の量は、2014年に25万5000b/dだったのが、2015年には18万5000 b/dに減少している。おっと、ラウル・カストロがすでにそう発言していたね。

さらに地元での消費も減少している。これは2014年に64万7000 b/dだったのが、2015年には58万b/dに減った。これはどえらい景気後退だ。わずかばかりの朗報としては、「未回収の原価および費用の純額」(「忌まわしいガソリン助成金」に当たるニュースピークのこと)が、前年の161億ドルから2015年には77億ドルに減少したことだ。

2015年の「未回収」金額を、同年に計上された73億ドルの利益と比べてみよう。不思議の国のウサギ穴だ。2月のガソリン助成金削減でこの穴が埋まることはないだろう。

まだまだ見るべきところはあるものの、どこかでツアーをおしまいにしないといけない。なので、最後にこれをどうぞ。

バリベン(BARIVEN)のヴォルデモート

「PDVSAは汚職を許さない。」これは注記32で述べられている文章で、超遠回しに、とある請負業者のとある代表が2009年から2014年にかけて起きたある汚職とマネーロンダリングのかどで法律に違反し訴えられた件と、とある海外子会社の元従業員がテキサスで起訴され、罪状を認めた事実について言及している部分だ。これは引用した方がいいだろう。なんというか、笑えるから。

En diciembre de 2015, la fiscalía para el Distrito Sur de Texas, División de Houston, en Estados Unidos de América, presentó una acusación en contra de representantes de ciertas empresas contratistas y proveedores de PDVSA, por ciertas violaciones de leyes anticorrupción y contra el lavado de dinero, entre otros cargos, en relación con contratos de procura internacional de bienes y servicios conexos celebrados con una filial de PDVSA, durante el período comprendido entre los años 2009 y 2014.
Adicionalmente, ciertos extrabajadores de una filial extranjera de PDVSA fueron acusados por los mismos hechos.
Todos los acusados se declararon culpables en diferentes oportunidades procesales, entre finales de 2015 y junio de 2016.

PDVSA no tolera actos de corrupción y continuará investigando y actuando con el propósito de determinar responsabilidades sobre los hechos identificados.

La investigación está en curso y hasta ahora ha permitido identificar asuntos de interés tales como: Confirmar que la Compañía ha sido víctima de fraude en su proceso de procura internacional de bienes y servicios conexos.

(2015年12月、アメリカ合衆国、テキサス州南部地区検察局ヒューストン支部が、 PDVSAの某請負業者でサプライヤーの企業の某代表に対して、2009年から2014年にかけて起きた汚職とマネーロンダリングおよびその他の嫌疑のかどで訴えを起こした。これはPDVSAの子会社が締結した商品と関連サービスの国際調達に関する契約についてであった。
さらに、PDVSAの海外子会社の某元従業員も同様の嫌疑で訴えられた。
全被告人が2015年末から2016年6月にかけての異なる法的手続きの段階で罪状を認めた。

PDVSAは汚職を許さない。そのため、今後も調査を続け、特定された事実について責任の所在を明らかにする役目を果たしていく。

調査は現在進行中で、これまでの時点で以下の問題点を特定した。:当社は商品と関連サービスの国際調達のプロセスにおける不正の被害者であった。)

実名を出そうとしないこの怪しげな書き方、ウケるんだけど。大人になろうよ。彼の名前はロベルト・リンコン。真っ黒で有罪だよ。本人がそう言ってたし!

maxresdefault-1でも、決算報告書世界ではそうでもないようで。PDVSAは自分たちが「不正の被害者」だと主張している。でも大丈夫、 PDVSAは調査を進め、新たな管理制度を築いている最中だそうだ。あーよかった、これで夜も安心して眠れるね。

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