ベネズエラでは買い物も命がけ

価格統制された品物を買うのは日に日に困難になっています。最近では数時間の長蛇の列に並ぶだけではなく、最近では、前日から順番待ちリストに名前を連ね、さらに一晩中泊まり込みで列に並ばなければなりません。

超危険な街で、深夜に列に並ぶ恐怖。人々の苛立ちと怒り、吐き気のするような臭い。

最低賃金に近い給料しかもらえない多くの人は、危険をおかしてでも、このようにして列に並んで品物を買いに行かなければ生きていけません。こうまでして人々はその日に買える物をとにかく買い、その買った物を別の人と交換して自分に必要な物を得るのです。

今回紹介するのはビクトリアの価格統制品の買い出しについての記事です。ベネズエラの若い女性のショッピング体験談をどうぞ。


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グアヤナの26時間
26 Hours in Guayana
2016年7月25日 Victoria Moreno

もし数ヶ月前に、近々私は世界で11番目に危険な街で、午前3時に歩道に横になって、鉄板の上で焼かれるアレパみたいに地面で寝返りを打ってはゴロゴロすることになるだろう、と言われたら、私は笑ったはずだ。

だが現実に、私はここにいる。

別に最新のiPhoneを買うために行列に並んでいるのではない。食料を買いたいだけだ。

私は修士を終わらせるために数ヶ月間スペインで暮らしたあと、故郷のシウダード・グアヤナ(Ciudad Guayana)、この想像以上に悪化した国に帰ってきた。

帰国して最初に近所の人が私に言ったことは「よかった!これで一緒に順番に並べるね!」だった。

私は彼女がふざけているのかと思った。

私をネタにして。

再適応の中での最初のショックは、今では食料を買うための行列は、現に、政府に指定された自分の買い物日(政府発行IDの最後の数字で順番が決まる)の前日から始まると知ったことだ。多くの場合、順番待ちは前日の早朝に始まる。

正確にどれくらい早くから並ぶかは、どの店で行列に並びたいかで決まる。この火曜日の私の戦場はファルマトード*だった。

訳注* ベネズエラのドラッグストア

私は店に午前8時に到着し、「順番待ちリスト」に名前を書いた。この「リスト」が、「一つの指輪」のように全てを統べる。順番待ちリストに名前がない人に、価格統制品はない。

順番待ちリストを管理するのはこの辺りでは最も有力なバチャケロ*の女性(我らが行列管理の請負人)で、彼女はそのファルマトードの前のヤシの木の下に住んでいるようだった。

訳注* 統制品を買い占め闇市で売りさばく転売人のこと。もちろん犯罪。

この朝の順番待ちリストへの名前の記入は、まだ第一段階だ。リストから名前を消されたくなければ、だいたい数時間ごとに戻らなければならない。

これが意味するのは、順番待ちリストに名前があることを確認するためだけに全日無駄になるということだ。8時間交代の仕事など不可能だ。学校にも行けない。午前10時頃に戻って確認し、正午に戻り、それから午後2時に戻って、午後4時に戻って、午後6時に戻らなければならない。こんな感じで続く。

ラッキーにもエアコン付きの車を持っていたら、これもずっとマシになる。だけど車がなければ*、この悪名高い気候をやりすごしながら、街のひどい交通機関を利用しなければならない。42°Cの暑さのおんぼろバスで行ったり来たりするのはかなり辛い。

訳注* ベネズエラは車社会と言われるが、実際のところ、車を所有できるのは中流階級以上であり貧困層の多くの人々は車を所有していない。このため格安のガソリンの恩恵を最も受けているのは、結局、貧困層よりも中流および富裕層である。

行列への参加資格は投資なのだ。だからみすみす失ってはいけない。2リットルのコーラとスナック菓子を買っておくのはいいアイデアだ。これは「リストの女主人」に捧げる生贄の供物になる。彼女の機嫌を損ねてはダメだ。名前を覚えられてしまう。

大規模な間引きの時は深夜にやってくる。翌日の認められた買い物日に店が開くまで、そこで一晩過ごすのだと気持ちの面で覚悟を決めなくてはならない。私は35番目だった。

こうして、私の人生で最悪の一晩が始まった。

汚い、ゴキブリがうようよししている歩道に横になる。めちゃくちゃ臭い。周辺に公衆トイレはなく、人々が一日中そこで順番待ちをしているのだ。

不気味なほどに静かである。すべてのベネズエラの街と同じく、シウダード・グアヤナでも、夜がくると人々は自ら課した夜間外出禁止令に従う。そして夜は寒い。

眠ってはいけない。だからホセ(本名ではない)のことを考える。

ホセは家の近所の人の息子だった。私が帰国する数週間前、ホセはこの必須の行列に並ぶため、午前3時に家を出た。彼には紙おむつが必要な赤ん坊の娘がいた。

目撃者によれば、1時間ほどしたところで、GNB(国家警備隊)が最近の新しい「作戦」(犯罪取り締まりの強制捜査)のためにやってきた。ほどなくしてホセは乱闘のただ中にいた。列に並んでいた誰かがナイフを出したのだ。国家警備隊は人々に発砲し、半ばやみくもに人々を逮捕し始めた。

ホセの姿が消えた。彼の死体は、3日後に藪の中で発見された。3発撃たれた痕があり、先の夜に目撃された際に着ていたのとは異なる服を着ていた。この事件はニュースにならなかった。「ニュース」要素がなかったからだ。

世界でも有数の危険な街で、真夜中に順番待ちの列に並ぶことの本当の意味に気づき怖くなった私は少し自己憐憫に浸った。どうしてこの国はこんなにひどくなったのだろう?いつの時点でこの国はここまで落ちたのか?奇妙な夢を見ているような気分だ。

だが、眠ってはいけない。ほんの1分さえも。

夜が明けて、家に車があるラッキーな人たちのところには、家族が朝食を届けにやってくるだろう。中には露天商から何か食べる物を買う人もいるだろう。だが多くの人は何も食べない。

列に並んでいる人は、知り合いでなければお互いに話したりしない。感情が高ぶっている。誰もが怒っていて、フラストレーションを溜めている。国家警備隊が近くにいないと、そのフラストレーションを大声で口にする人もいる。

ついにファルマトードが開店すると、警備員は人々を10人のグループごと入店させる。あらゆる混乱や衝突を避けるためだ。3つのグループが入店して、私の順番が来た。

ひとたび店内に入ってもまだ列がある。少なくとも、ここではクーラーが効いている。中には、ゲータレードやプラタニート*の袋を開け、飲食した後に空のボトルや袋を棚に戻している人がいる。

訳注* プランテン(調理用バナナ)のチップス。

午前10時、ようやく私は支払いを済ませ、宝物を持ってとぼとぼと家路につく。歯磨き粉とマヨネーズとケチャップを持って。先日に順番待ちの列に並んで、26時間が経っていた。

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ベネズエラでは買い物も命がけ」への7件のフィードバック

  1. はじめまして!
    神田といいます。

    yahooニュースでベネズエラが大変なことになってると知って、ベネズエラについて調べようと思ったらこのブログを発見しました。

    ベネズエラの食べれないことで苦しんでる人達に対して、何かできることはありませんか?

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    • 神田さん、はじめまして。

      ブログを訪れてくださりありがとうございます。

      残念ながら、現在ベネズエラ政府は国際的な援助(食料や医療品などの海外から送ること)を拒否しているので、食べ物がなくて苦しむ人に何かしてあげることはかなり難しいです。

      そもそもベネズエラ政府の見方によれば、「ベネズエラにはひどい食料危機や医療危機問題は存在しない」のです。実際に、個人宛に何か荷物を送ることは可能ですが、ほとんどの場合、途中で中身が盗まれます。旅行カバンに物資を入れてベネズエラに旅行に行く人が持ち込むのがまだ確実ですが、それも空港で開けられて中身を当局に盗まれることはよくあります。
      さらにある程度以上の量の支援物資をベネズエラに送ると途中で止められるどころか、受取人が物資の違法な買いだめの罪で逮捕される可能性すらあります。

      お金を送るのもベネズエラの人は外貨の引き出しに限度額があったり複数レートの問題があり、かなり難しいです。またインフレのせいでお金自体があまり意味を持たなくなりつつあります。

      このような状況でできることは、少しでもベネズエラの現状を多くの人に知ってもらい、国際的なプレッシャーを政府に対して与えていくことくらいです。なので、ぜひベネズエラ情報を多くの人にSNSなどでシェアしてください!これが一番の助けになります。

      いいね

      • ベネズエラでアジア人に対する差別があるという話は聞いたことあります。
        アジア人は日本人も含め全てチーノですしね。
        これにはアジアが地理的に遠いことや、ベネズエラ政府と中国政府の取り決めによりここ数年で大量の中国人がベネズエラに流入しているせいもあるのかもしれません。

        ですが、ベネズエラ人全体を差別主義者と断定することには同意できません。
        ベネズエラには日本の文化に親しみ日本を好きな人もいます。
        https://venezuelainjapanese.com/2014/08/14/goenmaracaibo/
        そのような例も知っていただきたいものです。

        いいね

  2. はじめまして。少しだけコメントさせてください。
    >もし数ヶ月前に、近々私は世界で11番目に危険な街で、午前3時に歩道に横になって、鉄板の上で焼かれるアレパみたいに地面で寝返りを打ってはゴロゴロすることになるだろう、と言われたら、私は笑ったはずだ。
    >だが現実に、私はここにいる。

    これはまさに日本の明日ですね。明日日本で、おにぎり1個が1万円や100万円に値上がりしても、不思議ではありません。日本はGDPの2.5倍もの借金を抱える世界最大の借金大国です。今は、日銀が国債を買いまくって、問題を先送りしてるだけです。いつ円や国債が暴落してもおかしくありません。今年も税収が56.3兆円しかないのに、63.8兆円もの借金をしてます。

    このままだと、来年の6月には、日銀による国債買いは限界に達するというのが、元日銀副総裁の岩田一政氏による試算です。IMFによる試算でも、17年~18年には、日銀による国債買いは限界に達するそうです。そうなれば、円も国債も暴落します。資源も食料も輸入に依存してる日本で、ハイパーインフレは確実な未来です。

    日本は戦中戦後、ベネズエラ同様、統制経済下に置かれました。今後、日本はベネズエラ同様、統制経済に向かっていくでしょう。私は、ベネズエラの現在は日本の明日という視点から、ベネズエラ情報を見ています。

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    • ベネズエラを見て「日本もそのうちベネズエラみたいになる」という方はおられますが、私はそれはとても乱暴な見方だと思います。

      日本経済が深刻な状況にあり、日本は日本なりの問題を抱えているとは思います。ですがそこでベネズエラと比べるのはあまり意味がありません。特に、経済に関しては日本とベネズエラの抱える問題も、国を支える資源や産業の状況も全く異なります。ちなみに、ベネズエラでは食料や日用品を輸入に依存しているからハイパーインフレになっているのではありません。

      また、ベネズエラの治安の悪化は経済悪化が原因というより、ベネズエラでの麻薬密輸の問題と切り離せません。これはコロンビアでFARCとコロンビア政府が和解したことの裏返しともいえると考えられます。今ベネズエラで起きていることの結果だけ見れば共通点が見られるかもしれませんが、現在の状況に至るまでのベネズエラの過程や背景を見れば、日本で同じことが起こるなど、現時点ではありえないと思います。

      いいね

  3. ピンバック: 【ラテンビート映画祭】「彼方から」金獅子賞受賞のベネズエラ産ゲイ映画チェ・ブンブンのティーマ

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