近隣住民武装の新たな常識

治安の悪化が深刻なベネズエラでは、ここのところ、住民自ら武装し犯罪者に対してリンチなどの制裁を加える自警団化がみられます。住民は警察や司法当局が自分たちを守ってはくれないことを知っています。こうして地域全体はますます無法地帯となっていくのです。

今回紹介するのは、まさにそのような状況の中で暮らすグアヤナの街の住民の話です。住民は突発的に武器を取り、自ら裁きを下すようになったのではありません。そこには何年間も毎日のように続いた恐怖と絶望の積み重ねがあります。


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 エドウィンを紹介します
Meet Edwin
2016年9月13日 Victoria Moreno

グアヤナでは、犯罪の恐怖は街にしっかりと刻み込まれている。犯罪が増加するにつれ、家の周りの壁もますます高くなっていった。次第に、鉄格子、電気柵、遠隔操作のセキュリティ付きの門がどの通りにも見られるようになった。

ただし私たちの住む通りは違った。理由は、ここに住む三家族がパーティーを開くときに何度も何度も門を開くのは「不便すぎる」として拒んでいたからだ。そんなことをすればターゲットにされると気づくべきだったのだが。

数年前、私たちはエドウィンに目をつけられた。エドウィンは痩せて日焼けした男で、ある日どこからともなくやって来た。いつもオンボロのベラ(悪党の頼りになるバイク)に乗り、手には45口径を持っていた。エドウィンが姿を現したとき、彼の名前を知る者はいなかった。だが、プエルトオルダスは大都市ではない。すぐに調べはついた。

エドウィンは「ラテリート(ケチな犯罪)」から小さく始め、携帯やその他の貴重品を人や家から盗んでいた。

彼に強奪されたり泥棒に入られたりした人が悲鳴を上げ懇願する声を耳にするのが日課になった。時には、カーテンを開けると彼が新しい被害者を襲うのが見えることもあった。うちの通りの向かいのブロックの住民は、駐車していた車からバッテリーやタイヤが盗まれたとしょっちゅう訴えていた。

エドウィンは私が住む通りだけでも、20人以上から盗んでいた。何度か彼を警察に通報しようとした人もいた。でも、猛暑の日にただ誰かに携帯や車のバッテリーを盗られたというだけで邪魔された警察官の顔は、ベネズエラ人なら誰でも想像がつくだろう。

時が過ぎ、エドウィンはより大胆で凶暴になり、彼の強盗はさらに手が込んだものになった。夜中に住民が目を覚ますと、誰かが家に押し入っており、何かが盗まれたことに気づくということもよくあった。仕事から帰ってみると家がほとんど空にされている、つまり家具も含め、ほとんど全てがなくなっていることもあった。

一度など、近所の人が家を出ようとしたときに、エドウィンが姿を現したことがあった。彼女はそのとき携帯を持っていなかったので、エドウィンは彼女の結婚指輪を取り、怒って彼女を床に突き飛ばした。

またあるときは、私の母が近所の人と雑談しているときに起きた。近所の人はうちの家の車庫の鉄格子にもたれていた。遠くの方でエドウィンの乗ったベラのいつもの音が聞こえてきて、母も近所の人も、彼が姿を表す前に、これから何が起こるのかわかった。このとき、エドウィンは銃を直接近所の人に突きつけ、いつもの物を要求した。携帯と財布と鍵だ。彼女はエドウィンに向かって、自分は何も持っていないし大切な人のためなら撃たれてもいいと言った。彼はただ銃で彼女を殴っただけで去っていった。

誰もが被害妄想になり、外出するのを恐れ、家にいるのを恐れた。我が家は私たちの牢獄になった。5ブロック先の警察署は相変わらず役に立たなかった。

2014年12月24日、ついにそれは起きた。ある住民がパーティーの後で家に帰り着いたとき、エドウィンが現れた。エドウィンは彼の車を盗もうとしたが、その人は怒ってやけくそになっていて、うんざりしていた。その人は壁の向こう側の玄関ポーチの車の鍵を投げた。彼は2発撃たれた。だが一命を取り留めた。エドウィンが近所の人を撃ったのはこれが初めてだった。

この事件のあと、やって来たときと同じようにエドウィンは姿を消した。ある人はエドウィンは刑務所にいると言い、ある人は殺されたのだと言った。何の記録もないこの街では、失踪は普通にあることだ。だからエドウィンが跡形もなく蒸発しても誰も驚かなかった。

彼はいなくなった。でも被害妄想はあとに残った。疲れ果て、治安当局からは忘れられたと感じた近隣住民は、自ら武装し、自分たちの手で裁きを下すことを決めた。住民たちは今後は射殺も辞さないことを知らしめた。

先週、一台の着色ガラスをつけた車が近所の通りに停まった。時間が過ぎ、朝の4時になって、車中の人間は誰かが通りかかるところを襲うために待機しているのだと考えた近隣住民の誰かが、意を決して上空に向けて2発威嚇射撃を行った。

車内の人たちはそこから退出しようとした。だが、この迷路のように入り組んだ地区では、広い道路は私たちの通りだけだった。だから、車は来た道を戻るにはUターンしなければならなかった。車がUターンをした時、最初の発砲とは別の、少なくとも3丁の銃が発砲した。ただし、このときは動く標的に向けて発砲された。

近所中に銃声が鳴り響いた。あとになってわかったのだが、その車に乗っていたのは、ここの住民の息子を家まで送り届けた友人だった。ベネズエラの典型的なやり方に従い、この友人はすぐに車を発車させなかった*。だが、そこで仲間としばらく酒を飲み、おしゃべりをしていたせいで、近隣住民に過剰な疑念を抱かせてしまうことになったのだ。
訳注*ベネズエラでは、誰かを家まで送って行くとき、万が一の時のために、送った相手が完全に家の中に入るのを見届けるまではその場を立ち去らずに待つ習慣がある。

負傷者は出なかった。この時ばかりは警察官が現場にやってきて、一軒一軒まわり情報を求めた。誰も何も見なかったし、誰も何も聞かなかったし、誰も何も言わなかった。警察官たちはその世間知らずの二人組を逮捕した。この二人は何かを企んでいたはずだと考えたのだ。そして去った。

これが、今の私の住む家の近所の新たな常識だ。訓練を受けていない武装した一般市民が、事態を進める中で勝手に作った交戦規定に則って殺傷能力をもつ武器を行使すると脅している。何か恐ろしいことが起こるのも時間の問題だ。誰もがそれをわかっている。

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