混乱を極めるベネズエラ

ベネズエラの選管による大統領罷免の手続き中止決定のショックもつかの間、予定されていた通り、10月26日にベネズエラ全土で野党主導の大規模なデモが行われました。野党によると120万人参加とも言われ、ベネズエラにおける抗議運動としては未曾有の規模でした。カラカスのメイン通りを埋め尽くす人の様子は一気に世界中に伝わりました

この大規模な抗議運動は、罷免手続きの中止(政府が完全に憲法を無視、独裁化)に続き、ベネズエラにとっては大きなターニングポイントとなるものです。

この9月にもベネズエラの大規模抗議は大きく報じられたので、一体これまでとどこが違うのか?と疑問に感じる人も多いかもしれません。この点について解説します。

ようやくの野党団結

ベネズエラの野党は長年深刻な問題を抱えていました。日本では、野党連合MUDは反政府という点からしか論じられません。しかし実際には、「反政府、大統領罷免、政権交代」を目標にすると言っても、いかにこれを達成するかという点で、内部では分裂していました。

大統領の即時退陣を抗議運動を通じて達成しようとする過激派・急進派、レオポルド・ロペス(2014年に政治犯として投獄され現在に至る)らの「民衆の意志」党一派と、憲法に記された法的手続きに則って正攻法で政権交代を目指す穏健派と呼ばれるエンリケ・カプリレス(2012年の野党統一の大統領候補)らの正義第一党の一派、さらには穏健派でもチャベス時代以前の旧勢力を率いるエンリ・ラモス・アルップ(現国会議長)の民主行動党などです。

特に過激派と穏健派の間の溝は深く、そのせいで、MUDとしてどのような政治戦略をとるかという点でなかなか足並みが揃わず迷走を続けていました。

例えば、2014年の大規模なデモは過激派が表に出る一方で、穏健派はこのデモに対して懐疑的かつ否定的でした。そして今年に入ってからの罷免手続きの要求では、穏健派が前面に出てMUD全体が進む一方で、民衆の意志の活動家や政治家が次々と不当に投獄され、過激派は苛立ちをつのらせていました。

このような中で、ベネズエラ政府自身が穏健派の選択の道を完全に絶ってしまいました。その結果、野党には過激派の方向性でいくしか選択肢は残されていない状態になったのです。実際に、現在デモを盛んに呼びかけているのはエンリケ・カプリレスなどの穏健派です

デモしか大統領罷免に続く道はない

デモの前日に野党が多数を占める国会は、マドゥロ大統領の弾劾手続き開始を求める決議を可決しました。しかし、あらゆる行政機関、最高裁判所を始めとする司法機関、軍および警察が政府の管理下にある中で、国会手続きだけを通じて大統領が罷免される可能性はかなり低いでしょう。

だからこそのデモなのです。

国会の議決や、タイミングを完全に逸したバチカン仲介の与野党の対話「だけ」を通じた大統領の罷免は非現実的な状況下で、大統領を罷免を可能にするのは、政府に対して国民が自分たちの意志をその圧倒的な数で示すこと、過激派が長年訴えてきた抗議運動を通じての政府に対する圧力あってのことです。

「撃ってみろ、その盾で殴ってみろ、殺してみろ、俺はお腹がすいているんだから!」と叫ぶ抗議の若者。ベネズエラの食料不足に対して、人々は心底怒っています。

地方における当局の激しい弾圧

ベネズエラの首都カラカスには国際メディアの特派員が常駐しています(ちなみに日本のメディアはこの国際メディアの報道をもとにベネズエラ情報を伝えています。)そのため、26日カラカスの様子は世界中に伝えらました。しかし一方で、地方の様子はほとんど海外メディアでは伝えられませんでした。

実際には、26日の様子は地方とカラカスで大きな差がありました。

カラカスでは警察官1名が流れ弾に当たって死亡していますが、当局による目立った弾圧は報告されておらず、全体としては平和的にデモは終わったと見られています。

一方、地方都市では、警察当局による一般市民の激しい弾圧が報告されています。

メリダ

メリダの匿名の人物の報告によれば、メリダではコレクティボスと呼ばれる政府派の武装ギャングと警察が一緒に(丸腰の)一般市民を追い立てていました。警察など治安当局が抗議する一般市民に暴力を振るうコレクティボスを無視するのは今に始まったことではありません。しかし、警察とコレクティボスが綿密に連携しながら一般市民を弾圧するというのはこれまでなかったことです。

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サンクリストバル

サンクリストバルでも、警察とコレクティボスが連携して市民を弾圧する様子が目撃されています。

また、若い女性が5名ほどの警官に取り囲まれリンチを受けるショッキングなビデオもソーシャルメディアに流れました。

 

マラカイボ

マラカイボでは抗議参加者に対して実弾が発砲されていたという報告がありました。

さらに他の都市の様子を見るにはこちら

このように、当局による市民の弾圧レベルは2014年とは明らかに違うものになっています。

また11月3日にも大規模な抗議が予定されています。今後も規模の大小を問わず、あらゆるタイプの抗議が続くと考えられます。ある抗議はより成功し、28日のゼネストのようにある抗議はあまり成功しないにしても、抗議は続き、それに対する弾圧も続くでしょう。ベネズエラ政治はもはやこれまでとは全く別のステージにあるのです。

混乱を極めるベネズエラ」への2件のフィードバック

  1. 現在、カラカスに1週間滞在中。11月3日の大規模デモは中止のようですね?カラカスで、危険を回避しながら生活するストレスは、日本人の想像を超えるものを感じます。

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    • 今日のデモは公式には中止(延期ということらしい)ですが、このMUD指導者らの判断に不満な人はかなりいるのでどうなるでしょうか…蓋を開けてみないとわかりませんね。

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