自主クーデターの顛末(一部追加あり)

ベネズエラがここ数日、大変なことになっています。

日本のメディアはこれを政治問題捉えているようですが、数日経った今、これは政治問題ではなく、むしろ今月12日に支払い期限を控えたPDVSAの債務返済問題の副産物である、というのが大方の見方だと思います。

ベネズエラはここ数年、ベネズエラ石油公社PDVSAの債務支払いが滞ればデフォルトという綱渡りを続けています。マドゥロ政府は何がなんでも債務を支払うという姿勢を見せており、昨年までは中国から融資を得て瀬戸際でデフォルトを回避していました。が、ここにきて中国からの融資さえ難しくなっています。そのような中、ベネズエラの債務支払い問題にロシアのロスネフチが関わってきている、ということが背景にあります。

日本のメディアは触れられていませんが、これは石油や石炭といった資源の事業(この場合PDVSAの扱い)に関する法律である炭化水素法に関連する問題なのです。

時系列にそって見てみましょう。


3月29日

ベネズエラの最高裁が炭化水素法に関する判決No.156を出す。そのうちの4.4項の1文が、「以後国会の権限を最高裁が行使する」という内容だったため、野党をはじめ南米諸国がびっくり!

3月30日

ベネズエラの野党、南米諸国、EUが次々とベネズエラを非難する声明を発表

米州機構(OAS)はこれを自主クーデターだと非難、ペルーは大使を召還、長らくベネズエラに対して当たり障りのない対応に終始していたコロンビア政府がメキシコの説得でついに非難を表明するなど。

なぜ、今このタイミングで、このような判決が出されたのか?そもそも、最高裁はすでに国会の議決は全て違法という判決を出しており、事実上、議会を無効化しているので、あえて今、それを明文化する理由が不明。そのため様々な憶測が飛び交う。

例えば、副大統領タレク・エルアイサミなど政府高官がなんら反応しない中、影の実力者であるディオスダド・カベジョはただ一人この判決を讃える声明を発表していた。それを受け、ディオスダドがチャベス派内で敵をあぶり出すために仕組んだ混乱なのではないか?という噂があった。

3月31日

ベネズエラ国債急落

長年のチャベス支持者で、マドゥロ政権を司法面から支えてきた司法長官ルイサ・オルテガが、ベネズエラの国営放送VTVで今回の最高裁の判決を批判するという、またまた前代未聞の出来事発生。プロパガンダしか流さないVTVで、政府高官が政府批判などありえないし、しかもそれを拍手する聴衆まで放送されて、ほとんど放送事故状態。

さらにこの夜、ロイターの爆弾記事投下

内容は、金欠のベネズエラ政府がPDVSAの債務支払いのためにロシアのロスネフチに資金援助を求め交渉しているというもの。4月12日の支払額はおよそ30億ドル近くで、ロスネフチと6億ドルのローンを交渉中だという。つまり、ベネズエラ政府は全然お金が足りてないっぽいと。

そして、その夜マドゥロが評議会召集し、最高裁の判決を取り消す。

ただし、これは国会の立法権を最高裁が行使するという点だけで、それ以外の部分、炭化水素法を巡る部分は変更なし。


というわけで、ことの顛末は以下のようなものではないか、と考えられます。

12日の支払い期限が間近に迫るも、ベネズエラ政府は支払いのための資金が大幅に不足していた。払えなければデフォルトなので、早急にどこかからお金を借りなければならない。

このような中で、唯一お金を貸してくれそうなのがロスネフチ。ただし、お金を借りるための手続きを進めるには国会の承認が必要。だが、国会はこれを承認するはずがない。そこで国会の承認を得なければならないことを定めた炭化水素法の手続きが邪魔だった。なので、その部分を変更する判決を最高裁が出した。

つもりだったが、急いで判決文を書いたせいなのか、書いた人が若いインターンだったのか、勢い余って「国会の権限を停止する」という文面になってしまった。(冗談でなく、現在のマドゥロ政府における人材不足問題は深刻です。)

ベネズエラの国会と最高裁を巡る状況としては、以前から国会の権限などなきに等しい状況だったので、この判決が出ようと出まいと変わらない。が、このメインではない1文(4.4項)は予想をはるかに上回る非難を集め、代未聞の外交問題に発展してしまった。政府内部からまで反対の声が上がるなど、とにかく収拾がつかなくない事態に陥った。

そのため、慌てたマドゥロは1日に、速攻でこの決定を取り消した。ただし、取り消されたのは、国会の立法権を最高裁が行使するという点だけで、それ以外の、国会の承認なしに大統領が一方的に炭化水素法を改変できることを認める部分は変更されていない。

そもそもこれは炭化水素法についての決定だったのに、「国会の権限停止」の部分だけが一人歩きした形です。この文章が取り消されたことで、一旦は落ち着いたかに見えます。ですが、この文章が消されたから、ベネズエラ政府は独裁ではなくなったとは言えません。
国の資産であり、経済の全てを担う石油を国民によって正当に選ばれた議会の承認なしに、一方的に大統領が好きにするのを認めること自体が、最高裁が独裁を認めるに等しいからです。

さらに、現時点でロスネフチから借りるお金がどうなっているのかは不明です。債務は本当に支払われるのか、あるいはデフォルトするのか。またこの件で、政府内に生じた動揺は、今後の政権の行方にどのような影響を与えるのか。このドサクサで本当に得をしたのは一体誰なのか。何もかも不透明で、不穏な状況はなおも続いています。

(4月3日:前置きの部分を一部加筆しました)

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