シウダ・ボリバルで起きたこと

ベネズエラのデモの激化と、その弾圧の激化で抗議参加者がたくさん命を落としていることは、すでに日本でも報道されています。ですが、実際にデモの現場でどのようなことが起きているのかを伝えるレポートはありません。

先日、シウダ・ボリバルで抗議に参加していた医学生アウグスト・プガが頭を撃たれて死亡しました。その時の一部始終について、カラカスクロニクルのシウダ・ボリバル在住の記者のレポートを紹介します。動画は閲覧注意ですが、戦争中ではないベネズエラで現に起きていることです。多くの人に見ていただければと思います。


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シウダ・ボリバル・クロニクル:
殺されたアウグスト・プガ

2017年5月26日Carlos Hernández

シウダ・ボリバルでの水曜日のデモで1人が命を落とした。これは現在の危機的状況の中でも、最悪の出来事の一つとなるだろう。この日のデモは、MUD本部の戦略に従い、地方のCNE(国家選挙管理員会)のオフィスまで向かうものとして始まった。

だが前日の18日火曜日に、18名の医学生が逮捕されており、うち10名(男子学生)がまだ拘束されたままだった。この18名はありえない状況で逮捕されていた。逮捕される直前、医学生らは治安当局に怪我を負わされた抗議参加者を避難させようとしていたのだ。午後中ずっと、治安部隊は「大学の自治」(通常、治安部隊は大学のキャンパスには入れない規則になっている)に違反しており、治安部隊は学生部長のオフィスにまで入ってきていた。このような中で、シウダ・ボリバルのCNEに集中するなどとうてい不可能だった。

抗議参加者たちが求めるものは、CNEではなく、前日に政治犯となった医学生らの解放だった。最前列の政治指導者たちは群衆をなんとかCNEに向かわせようとしていたが、デモのルートは前日の逮捕現場である学生部長オフィスの近くを通っていた。そのため、そこに着くと多くの抗議参加者がその場に残ることに決めた。彼らの言い分は、「政治家に手紙を渡すためにCNEに行くなんてごめんだ」というものだった。

結果、デモの統率は崩れ、過激派が主導権を握った。そこから事態は急速に荒れた。抗議参加者は学生部長オフィスに隣接した通りを封鎖し、治安部隊の催涙ガス弾やゴム弾による発砲は一気に加速した。

これがそこで使われた催涙弾の数だ。

午後2時頃、どうやら非致死性兵器が底を尽きたらしく、警察は実弾を発砲し始めた。主に医学部生からなる応急処置部隊は、講堂の1つに応急処置スペースを設けていたのだが、すぐに銃撃で負傷した抗議参加者で手も足もでなくなった。

この動画を私に送ってもらうために接触した人物は、この講堂の大部分を撮影していた。長いが、本当に、できる限り見てほしい。ただただ圧倒される。もはや紛争地帯だ。

応急処置部隊はこのような事態に対処する準備はまったくできていなかった。応急処置部隊はまだ立ち上がったばかりで、寄付も多くは受けていなかった。手袋を用意するのがやっとなくらいだ。動画の3:10では、誰かの足から男が指で直接弾丸を取り出そうとしているのがわかる。

警察とGNB(ボリバル国軍)は抗議参加者を弾圧しようとしていただけではない。彼らは、学生部長オフィスの中にまで入り、建物の中に避難しようとした抗議参加者に向けても発砲していた。

医学生のアウグスト・プガは頭を撃たれたのは、そのような場所だった。

彼は即死ではなかったので、医療ボランティアは何か手が打てないかと奮闘した。あるグループは彼を講堂に連れて行こうと考えたが、まずは銃撃がおさまるのを待たなければならなかった。一旦銃撃が止んだ時点でできるだけ早く彼を確保しようとするも、警察は再び銃撃を始めた。あまりの恐怖に思わず彼を落としてしまい、結局、講堂まで彼を引きずって行った。

動画の4:00分で、彼らがアウグストを講堂に連れてくるところが見られる。アウグストをなんとか救おうと床に寝かせる。だが彼らが持っているのはガーゼだけだ。一部の人たちは、警察がとどめを刺しに中に入ってくるのではないかと恐れ、椅子でバリケードを作り講堂を封鎖を試みている。(9:12分)

短い休戦。人々はアウグストを救急車へと運ぶ。アウグストを助けていた学生たちは警察に逮捕された。その中の一人は携帯電話まで盗まれた。誰かを呼んでアウグストを車に乗せたかったが、電話は通じなかった。そしてGNBは車を一切建物内に入れさせなかった。道は絶たれていた。

唯一できることは、警察に発砲をやめるよう懇願することだった。こうしてアウグストを外に出すことができた。動画の最後では、数人の女の子たちが跪き「彼が死んでしまう」と警察に向かって叫んでいる。

彼らにはまだ助けなければならない他の負傷者がいたが、しばしの休戦は終わり、警察は引かなかった。彼らは屋根に登り、梯子をつかって、なんとか車が待機しているところまで負傷者たちを運び出している。

アウグスト・プガは1時間手術室にいたが、助からなかった。

これが水曜日に起きたことだ。抗議は木曜日も続いた。そして街中に広がった。シウダ・ボリバルでは人々の怒りが高まっている。そして野党指導者が抗議参加者がコントロールできなくなりつつあるのが容易に見てとれる。

木曜日の抗議は、アウグストに敬意を表して沈黙の抗議を行うと発表された。

だが、結局人々は警察署の前に来ると「人殺し」と叫びながらチャベスと州知事フランシスコ・ランヘル・ゴメスの写真を破壊することとなった。

もう火がついてしまった。

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シウダ・ボリバルで起きたこと」への6件のフィードバック

  1. まぁ根が土人のままなのだから、この状況もやむ無しかな。
    社会主義とか民主主義というのは先進国でしかなしえない体制ですから。
    今までが不相応な生活だったと国民自体が反省して飢え死にを受け入れるくらいの精神がないとね

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    • わざわざ書いて人の目に晒す必要もないような差別的なコメントを、他人のブログにわざわざ書き込む神経が全く理解できないです。そういうのはよそでやっていただけますか?こちらでは迷惑です。

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      • 差別的と言いますがベネズエラの話題はこのサイトのほかは肯定的なものは非常に少ないです。
        文化的や経済的に評価するものもなく、よりひどいのは当のベネズエラ人たちが非常に差別的な人間という事です。
        僕は差別的なコメントをしたいわけではないですが、国民が難民になり政府が独裁的になり国家が崩壊している中で
        そうした政治家を往々にしてのさばらせる要因を生み出した国民は、一切の誹謗中傷から逃れるべきではありません。
        批判が嫌だというのなら現状を生み出した要因は外国人や敵対する組織の陰謀という事なのでしょうか?不必要な弁護は逆に腐敗を延命させ自己を顧みなくさせます。
        もちろん汚いコメントは禁止されるべきではありますが不必要な言論批判も僕は好きではありません。肯定も否定もまぜこぜで語るサイトをしたくないのなら検閲と許可制にすべきです。

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        • 「僕は差別的なコメントをしたいわけではないですが」と言いながら、根拠に基づかない差別意識むき出しの意見を寄せられても、全く説得力ないです。

          ベネズエラを経済的に評価するものがないのは現時点では確かにそうかもしれません。ですが、例えば、文化的にベネズエラを評価するものがない、というのはあなたがベネズエラ文化についてご存知ないだけの話で、知らないからと、ベネズエラ文化を評価に値しないと決めつけるのはおかしいです。ベネズエラには音楽分野に限らず、現代建築や現代美術、映画界でも世界的に知られる優れた作家はいます。料理でもエスカノーネのような、ベネズエラ伝統料理の集大成もありますよ。

          もちろんベネズエラ人の中に差別的な人もいるかもしれませんが、それで国全体、ましてやベネズエラの政治や経済を評価するのは変です。
          そもそも、「国民が難民になり政府が独裁的になり国家が崩壊している中でそうした政治家を往々にしてのさばらせる要因を生み出した国民」を批判するのであれば、経済や政治(法律)、人々の意思決定の歴史を批判すべきです。そこで「ベネズエラ人たちが非常に差別的な人間」だと言い出すのは、全く筋違いです。まさか、自国の経済や政治に対する厳しい批判がベネズエラ人の間で起きていないと考えておられるわけではないと思いますが…

          ちなみに、ベネズエラは移民国家で20世紀に数多くの難民を受け入れて来た国です。フランコ時代のスペインを始め、ポルトガル、イタリアからの移民はかなり多く、東欧諸国からも、北欧からの移民がいますし、中東からの移民も非常に多いです。最近は中国からの移民も多くいます。
          また、他の南米国家に比べ、混血が非常に進んでいる(社会層の移動が多い)という話も聞いたことがあります。むしろ生粋のクリオージョの方が稀だそうです。

          当ブログの目的は、ベネズエラを国としてdisったり、持ち上げたりすることではありません。ベネズエラで何が起きているのかを伝えることです。「批判が嫌だというのなら現状を生み出した要因は外国人や敵対する組織の陰謀」だなんて、すごい論理の飛躍で、見当違いもいいところです。

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  2. NODAさんベネズエラの政府は一体全体どうしたら苦しんでいる人々を助けるのではなく、軍隊と秘密警察を投入して内戦をやらかすのでしょうか?彼等は軍事政府から民主化を成した筈なのに、結局前の軍事政府と変わらない反対派の誘拐、虐殺、政治家や官僚の汚職、経済破綻の絵に描いたような失敗をやらかしています。汚い戦争(アメリカ、ラテンアメリカ式のといいますが実際は旧ナチス親衛隊式のやり方でナチス親衛隊の戦犯をアメリカ、旧宗主国のヨーロッパが任務を遂行する引き換えに罪を問わない取り引きの結果です。彼等の亡命先にラテンアメリカやオーストラリア、中東、アフリカを必要性と安全から指定しました。亡命先の独裁者も高給で歓迎しました。)という彼等が否定した事をやり始めて国民の声に背を向けています。左派が訴えた理想はどこへ行ってしまったのでしょう。最近のベネズエラはおぞましいニュースばかりです。

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