ベネズエラ人がプレイするVA-11 Hall-A

昨年11月、ベネズエラ発のゲームVA-11 Hall-A(ヴァルハラ)の公式日本語版がついに発売開始されました。経済危機に犯罪、汚職、社会不安といった現在のベネズエラの状況を反映したようなダークでサイバーパンクな日常を描いたこのゲームを、ベネズエラ人はどのように見ているのでしょうか。


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VA-11 HALL-A:ディストピアを描くゲームがカラカスの危機をサイバーパンクに変える

2018年1月13日Carlos Hernández

「一日を変え、一生を変えるカクテルを!」
サイバーパンク バーテンダー アドベンチャーVA-11 Hall-A、通称ヴァルハラは、未来のディストピアにあるバーを舞台にしたゲームだ。この世界では、インフレや物不足、犯罪、汚職が蔓延し、大部分の市民の生活は悪化の一途を辿るばかりだ。
その街の名前はカラカス、いや、グリッチシティという。
プレイヤーは27歳のバーテンダー、ジルになってあらゆるタイプの客を相手にする。客との会話から、グリッチシティで人々がどれほど脅かされているかが徐々に明らかになっていく。
ゲームは、ジルがその日のニュースをチェックして飼い猫に話しかけるところから始まる。(なんと、この未来の猫は返事をしてくれる)。どうやら、新たな経済政策が発表され、また海外に大量に人々が移住しているようだ。

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このクインシーという男にはもしかして共産主義者のヒゲがあったりするのだろうか。

バーでは、この移住問題をはじめほとんどのニュースについて(例えば政府があらゆるデモをを禁止しようとしているなど)登場人物の誰も触れない。グリッチシティの市民は、狂った現実には慣れっこなのだ。
だが、客のひとりがビールを一杯飲むと愚痴り始める。

オレがこの仕事を始めたころなんぞ、老婆が死ぬだけでクリック数を稼げた。今はダメだ。さらに、病気の赤ん坊を抱えてトラックに轢かれないとな。死んだくらいじゃ足りん。お涙ちょうだいの裏話がなければな。

VA-11 HALL-Aは少し変わったゲームだ。プレイヤーはカクテルを用意し、それによって物語が展開する。 会話は客に出す酒の量によって変わり、アクションによって複数のエンディングが用意されている。だが、このゲームではエイリアンを撃ったり、剣とドラゴンを使って戦略を練ったりするようなことは一切ない。

グラフィックノベルのようであり、文学とゲームの間の境界にあるような作品だ。プレイするだけでなく読むゲームなのだ。このゲームを作ったのはSukeban Gamesというベネズエラのゲーム会社(そう、ベネズエラ人!)で、このレトロなアニメのスタイルが大当たりした。これが日本のアニメ文化に対するトリビュートであることは、一見してわかる。擬人化した動物から理不尽な会話に至るまで、何もかもがまさにアニメという感じだ。ゲームのwikiページをざっと見ただけでも、僕の気づかなかった元ネタが数多くあった。

ダークではある。だがあくまで控えめな「ダーク」さ

VA-11 Hall-Aをプレイしながら、僕は、医者がバーに入ってきて薬不足や栄養失調の子どもたちの話をすることを少し期待していた。だがゲームには全くそのような話は出てこなかった。カクテルの代金を払う際に、客の誰も値段のことを気にしていないのを見ても、登場するキャラクターたちはみなうまくやっているようだ。デモがまた激しくなり、「ホワイトナイト」(ゲーム世界のボリバル国軍GNB)が怒った群衆からリンチを受けるようになってもなお、彼らはみな仕事を続け、普通の生活を維持している。
最初、僕はがっかりした。だが、それから、そのことに心打たれた、このゲームのテーマは、最悪なグリッチシティを見せることではない。生きること、それがテーマなのだ。一般的なグリッチシティの市民にとっては、これ以上は望めないのだ。
メインキャラクターのジルは、仕事があり、生活ができている。彼女には映画のポスターのようなちょっとした物を買うお金さえある。彼女は仕事着でクリスマスパーティーに顔を出す。おそらく、彼女にはこれ以上のものは買えないのだろう。だが少なくとも、彼女は病気をしていないし、健康問題の危機に対処する必要もない。彼女は、将来性のない仕事をしながら27歳で貯金もないということを無視している限りは、街の問題を忘れられる程度に良い暮らしをしている。

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Sukeban Gamesはベネズエラで、人々がいつもどのように現状を切り抜けているのかを非常にうまく描写している。どれほど住んでいる街が狂っていたとしても、ジルと同様、僕もどうにかして普通の生活を送ろうとしている一人だ。
その意味では、VA-11 Hall-Aの言わんとすることは非常に重要だと思う。製作者たちは、日増しにディストピア化が進むベネズエラで暮らしながら、このディストピアの世界を描いたゲームを作った。もっと多くのプレイヤーを集めるために、現実世界の悲惨な状況を描くことだってできたはずだ。だがそうはせず、彼らはあえて、半ば機能していない国をなんとか維持しつつ、笑顔で毎日しゃにむに働くしたたかな人々を描くことを選んだのだ。

まったくすごいゲームだ。

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ベネズエラ人がプレイするVA-11 Hall-A」への5件のフィードバック

  1. 最近でた仮想通貨ペトロの保証になってる石油産業の慢性的な老朽化と技術者の海外流出でボロボロ。
    若者はアメリカなどの国に移住して兵役に就いてでもいいから祖国を捨てるしエリートはさっさと離脱。
    ロシアと中国は自分が忙しい。
    首班の取り巻きのみがいい暮らしという結局21世紀版共産主義による大失敗国家。
    はて、チャベス氏の約束した楽園は一体どこに?

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  2. こちらの記事を読み、ベネズエラという国からヴァルハラが生まれた理由が少しわかった気がします。
    「あまり聞かない国だなぁ」と漠然とした関心はあったのですが、この記事を読んでより興味がわきました。

    月並みなコメントになりますが、面白かったです。翻訳ありがとうございます。

    いいね

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